永遠に叶えたい愛がある。
勇人は布団の上から私をポンポンと優しく撫でた。
「紗英」
私を呼ぶ聞き慣れた声。
ついこの前までは高いトーンだった気がしたのに、いつのまにか少し低くなっていて。
それでも安心するには十分で。
ざわついていた心音がスピードをゆっくりへと変える。
深く呼吸をして被っていた布団を少しずらしてみると、そこには優しい笑顔で私を見る勇人がいた。
「勇人ぉ」
目頭が熱くなる。
勇人の手が今度は直に私の頭を撫でた。
「聞いてもいい?」
「…?」
「宗平さんだよね」
その名前を聞いてついに目尻から滴が伝った。
「…うん」
勇人には敵わない。
なんで知ってるの?
なんて聞くまでもなかった。
勇人はなんでもお見通しなんだ。
「ちょっと前くらいからなんとなくそうかなって」
ズズズと鼻を啜る。
「宗平さんの話するとき紗英の反応がいつもと違ったからさ」
そんなにちがってたのかな?
自分ではさっき気づいたばかりなのに。
「こんなの初めてでどうしていいのかわからない…」
んーと勇人は少し悩むと
「そのまま自然に任せたらいいんじゃないかな?」
そう答えた。
「そのまま…?」
「そう、そのまま」
そのままというのは一体どういう意味を表しているのだろうか。
「紗英がこうなりたいとか、あんな風になりたいとかそう思ったらなれるように努力すればいいし、今のままで満足してるなら何もしなくてもいいと思う」
勇人は私の勉強机に腰かけると何かを手に取った。
一体、勇人の言っていることは恋と何の関係があるというのだろうか。
それでも。
「私はもっと女の子らしく、可愛くなりたい」
“可愛くなった…?”
前に宗平に言われた言葉。
思い出すだけで胸がきゅーっとなる。
もっと可愛くなって宗平に見てもらいたい。
「いいじゃん。紗英ならなれるよ。これ、似合ってたし」
そう言って手に持ったものを差し出した。
前に早希が着けてくれたピンクのお花の髪留め。
「ありがと。頑張ってみる。困ったらまた話聞いてね」
勇人は頷くと、机から下りた。
トンっと着地した音が部屋に響く。
「さ、ご飯だよ」
そう言って私に背を向ける勇人の背中は少しなんだか寂しそうに見えた。