永遠に叶えたい愛がある。
体育館を出て数メートル歩いたところだった。
「千曲さん!」
聞き覚えのない声が後方から聞こえてきた。
振り返ると北高のユニフォームを着た部員らしき男の人が近づいてくる。
近くにその人しか見当たらず、私を呼んだのはたぶんこの人。
北高の生徒で間違いはないと思うけれど知っている人ではない。
「えーっと…千曲ですが何か?」
私を知ってるなんて何者?
横を見ると同じく不思議そうな顔をした早希と目が合った。
「体育館の2階に忘れ物があるそうなので伝えてくれと」
その部員はそう言うと私に一礼して、
「あ、ちょっと…」
走って体育館の方へと戻って行った。
なんて素早い。
なんて感心してる場合ではなく。
「紗英、なに忘れたの?」
「なんだろう」
持っている鞄を開いてみると、一応持ってきた物は中に入っている。
「とにかく行ってみたら?」
「うん、ごめんね」
早希と私は今歩いてきたばかりの道を戻った。
体育館の入り口をくぐるとさっきと変わらない光景が。
「ちょ、ちょっとスミマセン」
私たちに気づいた勇人がそう言って女子生徒の間を抜けてきた。
「佐藤さん、ちょっといい?」
早希の目の前に立ったかと思うと、
「あ、はい」
勇人は早希の腕を引いて体育館の外へと出ていった。
一体何事だ?
取り残された女子生徒と私の気持ちがシンクロしたように感じられた。
「あの子…可愛いかったね」
「勇人くん彼女いたんだ」
女子生徒からそんな声とため息が聞こえる。
可愛いとそう思われるのか、と勉強になった。
てっきり私の時みたいに囲まれてしまうんじゃないかと一瞬思ってしまったけれど、その心配はないみたいだ。
あ、2階行かなければ。
私は目の前の2階へと上がる階段を上り始めた。
私は何を忘れたんだろう。
「宗平くんどこ行っちゃったんだろうねー」
階下から女子生徒たちのそんな声が聞こえてきた。