永遠に叶えたい愛がある。
「嫌だ宗平、行かないで!」
背後から綾美さんの涙混じりの声が聞こえてくる。
それでも宗平は歩みを止めることなく進んでいく。
「…宗平!」
「いいから黙ってろ」
私の呼び掛けにもこの反応。
これ以上どうしようもない。
再び後ろを振り返ると、綾美さんはその場に崩れ座っていた。
泣き叫ぶ声が届いてきて、すごく心が痛め付けられる。
「あ…」
でもよく見てみると綾美さんの傍らには男の人がいて、綾美さんの肩に触れては宥めているようだった。
あれは誰なんだろうか。
「宗平、痛い」
舞台袖からアリーナへと下り、入り口とは逆方向の裏口らしきところから外へ出てきたところで私は宗平に捕まれている腕を引っ張った。
「悪い」
そう言って宗平は歩みを止めて私の手首を放す。
少し赤くなった手首をプラプラと振った。
「…なんか巻き込んで悪いな」
ゆっくりと私を振り返った宗平の顔はまたあのときと同じ何とも言えない表情をしている。
せっかく笑顔だったのに。
どうして綾美さんはこんな顔をさせるの?
私が泣きたくなった。
自然と。
本当に自然と、今度は私が宗平の顔に手を添えた。
どうしてこんなことができたのかわからないけれど、無意識にそうしていた。
「宗平…」