永遠に叶えたい愛がある。
「だからこの前駅で会ったときに俺の作戦は失敗したんだと知った」
あのあと無理矢理実家に帰したと宗平は言う。
「二度と来るなって言ったんだけどな…」
たかが16歳の男子高校生が家族と離れて暮らして、辛くないはずがないのに。
それでも妹のためにって何もかもを棄ててきて。
学校に通ってアルバイトをして家事をして。
私には絶対送れないような人生をこの人は生きている。
私は言葉を失った。
静かな時間が流れる。
夕日も沈みかけて、暗闇が見えてきた。
綾美さんはどうしただろうか。
泣き崩れる姿が目に浮かんだ。
そういえば、
「ねえ、あの男の人は…?」
体育館を出るときに見えた綾美さんの傍にいた男性。
「俺たちの幼なじみだ。綾美のことを想ってくれていて全部委ねて来たんだ」
だとしたら、またあの幼なじみの人も辛い想いをしているのであろう。
みんな一方通行の想いを抱えているんだ。
「もう、どうしたらいいのかわからない…」
そう言って宗平は頭を抱えた。
私はそっと宗平の頭に手を乗せる。
あったかいって言ってくれたこの手が少しでも癒してくれたらいいのに。
話を聞いたって私には何にもしてあげられない。
簡単に宗平が人に話さない理由を聞いて初めて理解した。
震える宗平の手を握ってただただ宗平を見つめて。
今にも溢れそうな涙を堪えて。
「…ごめんね、宗平」
私はそれくらいしか言葉にできなかった。