曇りのち晴れ
それから長い時間が過ぎ見舞いは誰も来なかった


後から聞かされた話


ユウキは亡くなったそうだ。



彼の家は複雑でユウキはいつも一人ぼっち。退院してアパートに戻って私に電話をもらった後
最期に手紙を書いて愛車に乗って対向車線に飛び出し即死。ブレーキを踏んだ跡も無く目撃者によるとユウキはハンドルも握っていなかったそうだ。




ユウキの手紙は私の元に届いた。ユウキの家族は祖父母しかいなかった。赤く目を腫らし痩せたお婆ちゃんからもらった手紙。お婆ちゃんはありがとうと言って面会室を出た。


「優子ちゃんへ
こんな手紙ごめん迷惑だよね、でも残して置きたくて。
僕は優子ちゃんが入院して来た時一目ぼれしたんだ。やっと渡せたのがチョコ一個だなんてダサい。でも初恋だったんだ。話しかけるのも怖くて嫌われるのが怖くて話さなくても一緒の空間にいられる病院が嬉しかった。退院して優子ちゃんの手紙読んだ。そしたらすぐ電話したくなって電話したんだ。かかって来た電話を取るのも怖かった、でも嬉しくて色々話してしまった。迷惑だったかも。僕は依存しがちだからもう優子ちゃんに依存してるのかも。女々しいけど笑わないで(笑)
今から優子ちゃんに会いに行くよ、あ、でもそれならこんな手紙必要無かったかな」


そこで終わっていた。無くして初めて分かるものそれはその人に対しての好意。


涙は出なかった、ただ漠然とした悲しさが心を覆っていた…
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