混 迷
遺言状の大きな内容は・・
会社経営・持ち株は、全て次男・葵に託す。
個人預貯金は、妻・里へ
個人資産(不動産)は、
妻・里、長男・羚、次男・葵、長女・雛で
分配する。
この家は、長男・羚に譲る。
と、書いてあった。
後細々書いてあったみたいだが・・・
「どうして、羚さんの名前が書いてあるのよ。」
「奥さま、羚様は吾妻の正統なご長男様です。
社長は、始めは会社も羚様に継がせる
お考えでした。」
「でも、羚さんが大学の時に
あんな事件をおこしたから
あの人が怒って日本から
出したんじゃない。
全ての費用もあの人が出したのよ。」
「母さんの入れ知恵もあったんだろう」
「なんてことを、いうの葵。」
「知ってるんだよ、俺は。」
葵が、俺の為に言ってくれているのは
わかっていたが・・・
俺が、アルをみると
アルは、肩を竦めながら
手をパンパンと叩いた。
アルは、佐々木先生を見て
「リョウは、大学の費用に関してと
大学にかかったであろう費用は、
全て返済済みですよね。」
と、日本語で言った。
「はい、高額のお金を頂いて
おります。
社長は、お返しするように言われましたが
羚様は、受けとりませんでしたので。」
「それと、これを。」
と、アルは佐々木先生に渡した。
そこには、
「吾妻晴敏からの財産分与は、
全て放棄いたします。
今後、吾妻葵・吾妻雛以外の吾妻家の
人間とかかわることを許否する。
と、書き記されております。」
と、佐々木先生は読み上げた。
葵は、
「兄さん?」
「あの人からの物には、
一切興味はない。
それでは、失礼する。
葵、また連絡する。
アル、帰るぞ。」
と、言って羚は、吾妻家を後にした。
門を出て、二度とここに来ることはない
と思った。