芸能人の彼と普通の女子高生。
お客様はお父さんに小さく頭を下げた。
そんなお客様をお父さんはしばらくじっと見てから言った。
「兄ちゃん、夕飯食ったか?」
「......?いや、まだ.....」
お父さん、なんで急にそんなこと聞くんだろ?
私も、恐らくお客様も、話の行き先が分からない。
「誰か作ってくれんのか」
「一人暮らしなんで、適当になんか食べますけど...」
「うちで食っていけよ。うちはこれからなんだ。美味いぞ?今日の夕飯は俺が作ったからな」
「お父さん!?」
何を突然言い出すの!?
「.....」
お客様も急なお父さんの提案に黙ってしまった。
「若いからってご飯適当じゃよくないぞ?飯は大事だ。せっかく兄ちゃんスタイルいいんだし。もったいないだろ。ほら、上がれ上がれ」
「ちょ、ちょっとお父さん!?......あ、あの、大丈夫ですか?」
心配になってお客様に確認すると、
「.....じゃぁ、いただきます」
え、食べてくの!?
その人も何を思ったのか、靴を脱いでうちに上がる。
.....ほんとに?
てっきり普通に断って帰っていくと思ったのに。
何が起きているのか分からなかった。
この人が嫌だとか、うちに上がられるのが嫌とかっていうんじゃなくて、とりあえず驚いていた。