芸能人の彼と普通の女子高生。
「それじゃ、お邪魔しました」
それだけ言うと奏大さんのすぐに出て行った。
バタン、と奏大さんが消えた後も私はそこから動く気にならず、しばらく立ち尽くしていた。
「顔、熱い....」
いや、顔だけじゃない。
全部だ。
身体全部が熱くて、ドキドキして、落ち着かない。
熱があるみたい。
未だ冷めないこの熱に私は戸惑っていた。
「奏大、さん.....」
今日始めて知ったその名前をポツリと呟く。
心が掻き乱される。
あの雰囲気に飲まれて、流されて。
奏大さんの哀しそうな顔は見たくない。
笑った顔をもっと見ていたい。
それに、
あの心地の良い声で「愛衣」ってまた名前を読んでほしいと思ってしまうのはなんで?
「次は、いつ会うことになるのか」
次に会うことにこんなにも心を弾ませてしまうのはどうして?
分からない。
この火照った体の静め方も、何もかも。
分からない。