芸能人の彼と普通の女子高生。
16歳、最後の夜
「おかえり愛衣ー!今日は店ちょっと早く閉めちゃった」
お店の方ではなく自宅の方に帰るとお父さんはまだ7時前だというのに出迎えてくれた。
いやいや、娘への愛強すぎか。
「え、...大丈夫なの?」
「大丈夫大丈夫!なんたって常連客は皆、今日が愛衣の誕生日だってこと知ってるから」
周知させといた!と言って笑い出すお父さん。
一応個人情報なんだけどね?
「仕事に私情挟みすぎかと...。いや、うん、でも、ありがとうね」
「気にするな!なんたって1人娘の誕生日なんだから!今年も愛衣の好きないちごのケーキ作っちゃったよ!」
「......」
「今年はやや酸味を強くしたベリーソースがポイントでーす!」
「.....ありがとう」
私とお父さんのテンションの違いに苦笑いにはなるけど、それでも自然と笑顔になれた。
嬉しそうにニコニコ笑顔で言うお父さんを見てると、ただまっすぐに私に愛情を注いでくれてるのが伝わってくるから、力が抜けて無条件に甘えられる気がした。
暖かいな、なんだか。