空を拾う



 ソラは依然音楽に合わせて気持ち良さそうに揺れている。

 ワインのせいか、薔薇色に上気した頬が愛らしかった。


 ソラには、このチェロの響きはどう聴こえているのだろう。

 ソラの藍色の瞳が恋しくて、悟は彼女の肩に手を置いた。


「ねえ」


 急に下から覗き込まれ、悟は息を飲んだ。ソラの眼の色は、異国の夜空のようだと思った。


「男の人もこんな風に泣くことがあるのかしら」


 チェロの音色はうねるように高低を繰り返し、哀切を奏でている。


「俺はそんなに強くはない」


 悟は生まれて初めて女に本心を打ち明けた。




< 10 / 17 >

この作品をシェア

pagetop