空を拾う
ソラは依然音楽に合わせて気持ち良さそうに揺れている。
ワインのせいか、薔薇色に上気した頬が愛らしかった。
ソラには、このチェロの響きはどう聴こえているのだろう。
ソラの藍色の瞳が恋しくて、悟は彼女の肩に手を置いた。
「ねえ」
急に下から覗き込まれ、悟は息を飲んだ。ソラの眼の色は、異国の夜空のようだと思った。
「男の人もこんな風に泣くことがあるのかしら」
チェロの音色はうねるように高低を繰り返し、哀切を奏でている。
「俺はそんなに強くはない」
悟は生まれて初めて女に本心を打ち明けた。