空を拾う



「何かに縋って生きたくはないんだ」

「可哀想なひと」


 ソラはその細い指で悟の髪を梳いた。遠い日々、悟が寝付くまで母はずっとそうしてくれていた。


 心地良くて、悟は再び目を閉じた。

 ソラの体温が眠気を誘う。


「私のことも、いつまでも貴方の心に残ればいいのにと思うわ」


 しかし、最早ソラの囁きは悟には届かず、悟はこの夜、ソラに暖かく包まれて眠りに落ちた。





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