こんな恋のはじまりがあってもいい
とっくに始まっていたもの
「はい?」
あまりにも自然な流れであっけなく流れたその言葉の
重要さに気付くには少し時間がかかった。
圭太もポカン、としている。
途端に笑い始めた。
「ちょ、お前冗談はそこまでにしとけって。」
「冗談じゃねえし」
シレッと真顔で答える彼の横顔を
思わずじっと見入ってしまった。
まさか。
まさか、そんなはずは。
だって真野くんはーーー
周りに居た他の生徒が何事かと興味本位で見ている。
これは恥ずかしいことになりそうだ
「ちょ、ちょっと待ってもういいから」
慌てて騒ぎを抑えようと声をかけるも
「オイあかね、お前…真野とどうなってんの?付き合ってんの?」
圭太がからかうような顔で私に聞く。
なぜこんなところでそんな話をする必要があるのか。
付き合ってるわけじゃない。
さっきのセリフも、聞き間違いじゃないかと思ってる。
かといって
真野くんの前でそんな質問には、答えたくない。
だって本当はーーー
「だーかーらー、今から付き合うんだよ」
言葉に困る私の方を抱き寄せ、真野くんがニッと笑ってそう宣言した。
「!?」
「ね☆」
こちらを向いてニッコリと笑う彼の顔が
あまりにも眩しくて
泣きそう
「俺はオマエじゃなくてあかねに聞いてんだけど」
呆れたように圭太が言う。
今更ながら、顔が赤くなってきた。
きっと、耳まで真っ赤だ。
何がなんだかわからないけれど
今、自分が好きだと認識した所なのに
その相手が、こんなに近くに、いる。
こんなスゴイことがあるんだろうか。
「なあ、どうなの」
圭太がしつこく聞いてくる。
ええいもう
こうなりゃヤケだ!
「…そ、そうだよ。つ、付き合うんだから」
「はっ、嘘くせー」
圭太が鼻で笑っている。
うん、私も嘘くさいと思ってる。
だけど
これは
「…嘘だと思ってくれてもいいよ。だからもう、ノートは自力で頑張ってね」
圭太にそう告げて、真野くんの方を見た。
「行こう、授業始まっちゃう」
「だね。」
二人で振り返り、圭太を後ろに残して教室へ戻る。
野次馬の生徒たちが何やら騒がしいけど
気にしたら負けだ。
それにしても
「ねえ、どういうこと?」
まだ赤い頬を気にしつつ、真野くんに真意を訪ねる。
「何が?」
「何が、って……」
自分で聞くのは恥ずかしい言葉だ。
その場しのぎ、と言われてしまったら
本気にした自分が恥ずかしすぎる
「市原、ちょっとこっち」
真野くんが、途中で
階段へと引っ張る。
始業前なので騒ついているものの、運良くそこには誰もいない。
「ごめん」
両手を合わせてパチンと拝まれる。
「何が?」
まだドキドキしているものの、なんとなくーー察した。
「あんな所であんなこと言って、困った…よね?」
あはは、と苦笑いをしながら
彼は私の様子を伺ってきた。
なんだ。
やっぱり、そうだよね。
そんな都合よい話があるわけなーーー
「もっかいチャンスちょうだい。」
え?
キョトンとする私の前で
彼はコホンと咳払いをひとつ。
「えー…俺は、市原さんのことが好きです。」
「……」
はい?
今、なんて?
そんな、都合いい話があるわけない。
そう思っていたのだけど。
「だって、真野くんは…ミキちゃんが」
私が言いかけると
「あーやっぱりそう思われてたかー」
はは、と真野くんは照れくさそうにガシガシと頭を掻く。
「それ、市原の勘違いね。俺ずっとお前が好きで、でもお前は東のこと見てただろ。」
「!!」
バレてた。
恥ずかしいし、今それ言われるのすごくキツい。
だって今はーーー
「でも、さっきの見て。どうしても我慢できなかった。」
「お前がアイツのこと好きでも、あんな風に困らせてるのは、俺が嫌だった。」
この人はなんてことを言ってくれるんだ。
泣きそう。
「……でも俺もあんなこと言って困らせて。結局アイツと一緒だな」
彼は少し伏し目がちに、そう呟いた。
待って、真野くん。
「違う」
とっさに自分の中から声が出た。
へ?と彼は顔を上げる。
私は彼の目を見て、思うままに言葉を続けた。
「違うよ、真野くん。私、困ってないから。むしろ嬉しくて
私、途中で真野くんが好きだって気づいて…そしたら本当に真野くんが」
途端に、視界に紺のブレザーが入った。
思いっきり、抱きしめられていた。
「……それ、本気で言ってる?」
「うん」
「本当に?」
「うん」
「信じちゃうよ?」
「うん」
いつもより、ずっと優しい声。
あったかい。
「そっか…よかった」
「うん」
しばらくこうしていたいところだったけど
目を覚ませと言わんばかりに始業のベルが鳴り響いた。
「やべ、遅刻する」
「早く戻ろう」
「これ、二人で戻ったら何か言われんじゃね?」
「いいじゃん、もうとっくに共犯」
二人で顔を見合わせて笑う。
今日の放課後は久しぶりに
あの、あったかいココアを二人で飲もう。
あまりにも自然な流れであっけなく流れたその言葉の
重要さに気付くには少し時間がかかった。
圭太もポカン、としている。
途端に笑い始めた。
「ちょ、お前冗談はそこまでにしとけって。」
「冗談じゃねえし」
シレッと真顔で答える彼の横顔を
思わずじっと見入ってしまった。
まさか。
まさか、そんなはずは。
だって真野くんはーーー
周りに居た他の生徒が何事かと興味本位で見ている。
これは恥ずかしいことになりそうだ
「ちょ、ちょっと待ってもういいから」
慌てて騒ぎを抑えようと声をかけるも
「オイあかね、お前…真野とどうなってんの?付き合ってんの?」
圭太がからかうような顔で私に聞く。
なぜこんなところでそんな話をする必要があるのか。
付き合ってるわけじゃない。
さっきのセリフも、聞き間違いじゃないかと思ってる。
かといって
真野くんの前でそんな質問には、答えたくない。
だって本当はーーー
「だーかーらー、今から付き合うんだよ」
言葉に困る私の方を抱き寄せ、真野くんがニッと笑ってそう宣言した。
「!?」
「ね☆」
こちらを向いてニッコリと笑う彼の顔が
あまりにも眩しくて
泣きそう
「俺はオマエじゃなくてあかねに聞いてんだけど」
呆れたように圭太が言う。
今更ながら、顔が赤くなってきた。
きっと、耳まで真っ赤だ。
何がなんだかわからないけれど
今、自分が好きだと認識した所なのに
その相手が、こんなに近くに、いる。
こんなスゴイことがあるんだろうか。
「なあ、どうなの」
圭太がしつこく聞いてくる。
ええいもう
こうなりゃヤケだ!
「…そ、そうだよ。つ、付き合うんだから」
「はっ、嘘くせー」
圭太が鼻で笑っている。
うん、私も嘘くさいと思ってる。
だけど
これは
「…嘘だと思ってくれてもいいよ。だからもう、ノートは自力で頑張ってね」
圭太にそう告げて、真野くんの方を見た。
「行こう、授業始まっちゃう」
「だね。」
二人で振り返り、圭太を後ろに残して教室へ戻る。
野次馬の生徒たちが何やら騒がしいけど
気にしたら負けだ。
それにしても
「ねえ、どういうこと?」
まだ赤い頬を気にしつつ、真野くんに真意を訪ねる。
「何が?」
「何が、って……」
自分で聞くのは恥ずかしい言葉だ。
その場しのぎ、と言われてしまったら
本気にした自分が恥ずかしすぎる
「市原、ちょっとこっち」
真野くんが、途中で
階段へと引っ張る。
始業前なので騒ついているものの、運良くそこには誰もいない。
「ごめん」
両手を合わせてパチンと拝まれる。
「何が?」
まだドキドキしているものの、なんとなくーー察した。
「あんな所であんなこと言って、困った…よね?」
あはは、と苦笑いをしながら
彼は私の様子を伺ってきた。
なんだ。
やっぱり、そうだよね。
そんな都合よい話があるわけなーーー
「もっかいチャンスちょうだい。」
え?
キョトンとする私の前で
彼はコホンと咳払いをひとつ。
「えー…俺は、市原さんのことが好きです。」
「……」
はい?
今、なんて?
そんな、都合いい話があるわけない。
そう思っていたのだけど。
「だって、真野くんは…ミキちゃんが」
私が言いかけると
「あーやっぱりそう思われてたかー」
はは、と真野くんは照れくさそうにガシガシと頭を掻く。
「それ、市原の勘違いね。俺ずっとお前が好きで、でもお前は東のこと見てただろ。」
「!!」
バレてた。
恥ずかしいし、今それ言われるのすごくキツい。
だって今はーーー
「でも、さっきの見て。どうしても我慢できなかった。」
「お前がアイツのこと好きでも、あんな風に困らせてるのは、俺が嫌だった。」
この人はなんてことを言ってくれるんだ。
泣きそう。
「……でも俺もあんなこと言って困らせて。結局アイツと一緒だな」
彼は少し伏し目がちに、そう呟いた。
待って、真野くん。
「違う」
とっさに自分の中から声が出た。
へ?と彼は顔を上げる。
私は彼の目を見て、思うままに言葉を続けた。
「違うよ、真野くん。私、困ってないから。むしろ嬉しくて
私、途中で真野くんが好きだって気づいて…そしたら本当に真野くんが」
途端に、視界に紺のブレザーが入った。
思いっきり、抱きしめられていた。
「……それ、本気で言ってる?」
「うん」
「本当に?」
「うん」
「信じちゃうよ?」
「うん」
いつもより、ずっと優しい声。
あったかい。
「そっか…よかった」
「うん」
しばらくこうしていたいところだったけど
目を覚ませと言わんばかりに始業のベルが鳴り響いた。
「やべ、遅刻する」
「早く戻ろう」
「これ、二人で戻ったら何か言われんじゃね?」
「いいじゃん、もうとっくに共犯」
二人で顔を見合わせて笑う。
今日の放課後は久しぶりに
あの、あったかいココアを二人で飲もう。