こんな恋のはじまりがあってもいい
クリスマスは二人で。
いつもどおり。
楽しく喋って笑いあって帰る放課後の道。
じゃあ、また明日ーーーと
いつもの道で、挨拶を。
その時だった。
「あのさ、市原ーーー土曜日、空いてる?」
土曜日。
12月24日。
クリスマス、イヴだ。
本来の由来はともかく、なんとなくワクワクする日。
待ってました。
そんな意気込みはバレないようにするけど
「うん!空いてる!」
張り切って返事をしてしまった。
バレたかな。
真野くんはふふ、と笑い
「わかりやすいね〜」
と私の頭をわしゃわしゃと撫でた。
「じゃ、土曜日。昼前に迎えに行くから」
彼はそう言って、帰って行った。
夕日の景色に溶け込むような背中をそっと見送って
私はいつもより軽い足取りで家に着いた。
プレゼントはもう準備完了。
あったかそうなマフラー。
鉄板アイテムすぎるんだけど、やっぱり彼にはこれが似合う。
そんな気がして。
あとは手作りクッキー。
真野くんの好きなココア味。
ラッピングして、紙袋に入れて。
もうそれだけでワクワクする。
実は、当日渡せなかった時のために
今日もコッソリ鞄に入れていたのだけれど
これで安心。
土曜日が楽しみ。
そして当日。
時間通りに迎えに来てくれた彼の姿に
心臓が口から出そうになった。
制服じゃない。
ただ、それだけの事なのに
いつもより眩しく見えてしまう。
私、どうかしてるのかな。
気を抜くとすぐに緩みそうな頬を押さえて
ドキドキしながら、彼と並んだ。
何もかもが、新鮮。
いつも歩く道なのに、いつも歩く街なのに。
隣に彼がいるだけで
どうしてこうも変わるのだろうか。
話す内容はいつもと同じ。
学校でのことや、好きなドラマや漫画の話。
友達のこともチラホラ。
あっという間に時間が過ぎて行く。
「今日はねー、映画も観たいなと思ってさ」
ちょうどこの間、今上映中の話題作について盛り上がったところだった。
二人揃って『見たい』と弾んだタイトルのチケットを購入する。
さりげなく2枚まとめて買うところが、いかもにも真野くんらしくて
その代わり、ジュースとポップコーンは私が払うと押し通した。
そんなやりとりも楽しく、顔を見合わせて笑ってしまう。
二人で観る、はじめての映画は
ファンタジーな内容かと思いきや
思いっきり恋愛系で切なく。
どうしても結ばれなかったはずの二人の赤い糸が
奇跡を経て繋がるといった感動の物語だった。
クライマックスで我慢できず涙が流れる。
恥ずかしくてバレないように、必死にハンカチで目頭を押さえた。
隣の彼をそっと盗み見ると
彼もまた、目に涙を浮かべていて
同じところで泣ける人なんだと、安心した。
映画の後はカフェでまったり、
外も暗くなってきて、家まで送ると言ってくれる。
二人でひたすら映画の感想トークに花を咲かせ。
あのシーンはこうだった、あのセリフがグッときた
と思い出しては二人でうんうんと頷く。
家の近くに、小さな公園がある。
どちらともなしに、なんとなく足を踏み入れる。
ブランコに腰掛け、ゆらゆらとしながら
どこで買ってきたのか、あったかいココアを2本。
「カフェオレ、見当たらなくって」
二人であったまりながら
空を仰ぐと、もう星が見えていた。
「……時間が経つのって、あっという間だね」
あ、そうだ、と
私はすっかり手に馴染んでしまっていた紙袋を、彼に渡した。
「え?」
キョトンとする彼に、内容を伝える。
「クリスマスプレゼント。開けてみて」
彼はガサガサと袋の中を見て、目を丸くした。
「……これ…………」
「へへ、真野くんに似合いそうだなって思って。」
暖かそうな、ウールのマフラー。
制服にも似合うように、シンプルなタイプ。
「うわ……マジで嬉しい……」
予想外の事だったみたいで、
彼は何度も何度も、マフラーと一緒に入ったクッキーと
私の顔を交互に見て嬉しそうな笑顔を浮かべた。
彼が喜んでくれて、私も嬉しい。
贈り物って、こんなにもあったかい気持ちにさせてくれるんだね。
こんな風に感じるの、初めてだよ。
「ね、巻いてみて」
「え…ああ、うん」
彼はそそくさとマフラーを首に巻いた。
「うん、やっぱり似合う」
イメージ通りだ。
「……あったかい…イヤほんとマジで俺…ありがとう」
喜びを噛みしめる彼を見て、今日はもう大満足。
すると彼は
「あ、俺も…」
と、手に持っていた紙袋を私に差し出した。
「えっ」
まさか
「そう。まさかの」
まさかの?
意味がわからずに、とりあえず自分へのプレゼントだということで受け取る。
中身を見て、息を飲んだ。
「…………これ」
彼は私の反応を見て、苦笑いを浮かべる。
「俺からのプレゼント。気が合うっしょ」
同じ刺繍、同じ色。
そう、同じマフラー。
こんな事ってあるの?
目を丸くしてる私を見て
彼はこらえきれずに吹き出す。
「すげーな、俺たち。」
私もあまりのおかしさにつられて笑った。
「ほんと、すごい」
貸してみ、と笑いながら
彼はそのマフラーを私の首に巻いてくれる。
お揃い。
恥ずかしいけど、くすぐったくて
嬉しい。
「……わ、これあったかいね」
自分では巻いてなかったので
改めて良かったと実感する。
そんな私の顔を見て、いつもより少し近い距離で向き合っていた彼は
「俺、ほんと幸せ。」
と、さらにあったかい笑顔をくれた。
そして
「あかね…メリークリスマス。」
触れるだけの、口づけ。
あまりにも自然すぎて、身構える暇も驚く隙もなかった。
頭がボンヤリする。
間抜けな顔をしていたようで、真野くんがくすりと笑う。
「やっぱ、面白いね。あかねの事、好きになって良かった」
「…………!!」
顔から火が出そう。
クリスマスの力でしょうか。
今日見たあの、映画の奇跡のように
私たちの赤い糸も、これからずっとーーー紡がれていきますように。
そんな願いを込めて、もう一度。
メリークリスマス。
楽しく喋って笑いあって帰る放課後の道。
じゃあ、また明日ーーーと
いつもの道で、挨拶を。
その時だった。
「あのさ、市原ーーー土曜日、空いてる?」
土曜日。
12月24日。
クリスマス、イヴだ。
本来の由来はともかく、なんとなくワクワクする日。
待ってました。
そんな意気込みはバレないようにするけど
「うん!空いてる!」
張り切って返事をしてしまった。
バレたかな。
真野くんはふふ、と笑い
「わかりやすいね〜」
と私の頭をわしゃわしゃと撫でた。
「じゃ、土曜日。昼前に迎えに行くから」
彼はそう言って、帰って行った。
夕日の景色に溶け込むような背中をそっと見送って
私はいつもより軽い足取りで家に着いた。
プレゼントはもう準備完了。
あったかそうなマフラー。
鉄板アイテムすぎるんだけど、やっぱり彼にはこれが似合う。
そんな気がして。
あとは手作りクッキー。
真野くんの好きなココア味。
ラッピングして、紙袋に入れて。
もうそれだけでワクワクする。
実は、当日渡せなかった時のために
今日もコッソリ鞄に入れていたのだけれど
これで安心。
土曜日が楽しみ。
そして当日。
時間通りに迎えに来てくれた彼の姿に
心臓が口から出そうになった。
制服じゃない。
ただ、それだけの事なのに
いつもより眩しく見えてしまう。
私、どうかしてるのかな。
気を抜くとすぐに緩みそうな頬を押さえて
ドキドキしながら、彼と並んだ。
何もかもが、新鮮。
いつも歩く道なのに、いつも歩く街なのに。
隣に彼がいるだけで
どうしてこうも変わるのだろうか。
話す内容はいつもと同じ。
学校でのことや、好きなドラマや漫画の話。
友達のこともチラホラ。
あっという間に時間が過ぎて行く。
「今日はねー、映画も観たいなと思ってさ」
ちょうどこの間、今上映中の話題作について盛り上がったところだった。
二人揃って『見たい』と弾んだタイトルのチケットを購入する。
さりげなく2枚まとめて買うところが、いかもにも真野くんらしくて
その代わり、ジュースとポップコーンは私が払うと押し通した。
そんなやりとりも楽しく、顔を見合わせて笑ってしまう。
二人で観る、はじめての映画は
ファンタジーな内容かと思いきや
思いっきり恋愛系で切なく。
どうしても結ばれなかったはずの二人の赤い糸が
奇跡を経て繋がるといった感動の物語だった。
クライマックスで我慢できず涙が流れる。
恥ずかしくてバレないように、必死にハンカチで目頭を押さえた。
隣の彼をそっと盗み見ると
彼もまた、目に涙を浮かべていて
同じところで泣ける人なんだと、安心した。
映画の後はカフェでまったり、
外も暗くなってきて、家まで送ると言ってくれる。
二人でひたすら映画の感想トークに花を咲かせ。
あのシーンはこうだった、あのセリフがグッときた
と思い出しては二人でうんうんと頷く。
家の近くに、小さな公園がある。
どちらともなしに、なんとなく足を踏み入れる。
ブランコに腰掛け、ゆらゆらとしながら
どこで買ってきたのか、あったかいココアを2本。
「カフェオレ、見当たらなくって」
二人であったまりながら
空を仰ぐと、もう星が見えていた。
「……時間が経つのって、あっという間だね」
あ、そうだ、と
私はすっかり手に馴染んでしまっていた紙袋を、彼に渡した。
「え?」
キョトンとする彼に、内容を伝える。
「クリスマスプレゼント。開けてみて」
彼はガサガサと袋の中を見て、目を丸くした。
「……これ…………」
「へへ、真野くんに似合いそうだなって思って。」
暖かそうな、ウールのマフラー。
制服にも似合うように、シンプルなタイプ。
「うわ……マジで嬉しい……」
予想外の事だったみたいで、
彼は何度も何度も、マフラーと一緒に入ったクッキーと
私の顔を交互に見て嬉しそうな笑顔を浮かべた。
彼が喜んでくれて、私も嬉しい。
贈り物って、こんなにもあったかい気持ちにさせてくれるんだね。
こんな風に感じるの、初めてだよ。
「ね、巻いてみて」
「え…ああ、うん」
彼はそそくさとマフラーを首に巻いた。
「うん、やっぱり似合う」
イメージ通りだ。
「……あったかい…イヤほんとマジで俺…ありがとう」
喜びを噛みしめる彼を見て、今日はもう大満足。
すると彼は
「あ、俺も…」
と、手に持っていた紙袋を私に差し出した。
「えっ」
まさか
「そう。まさかの」
まさかの?
意味がわからずに、とりあえず自分へのプレゼントだということで受け取る。
中身を見て、息を飲んだ。
「…………これ」
彼は私の反応を見て、苦笑いを浮かべる。
「俺からのプレゼント。気が合うっしょ」
同じ刺繍、同じ色。
そう、同じマフラー。
こんな事ってあるの?
目を丸くしてる私を見て
彼はこらえきれずに吹き出す。
「すげーな、俺たち。」
私もあまりのおかしさにつられて笑った。
「ほんと、すごい」
貸してみ、と笑いながら
彼はそのマフラーを私の首に巻いてくれる。
お揃い。
恥ずかしいけど、くすぐったくて
嬉しい。
「……わ、これあったかいね」
自分では巻いてなかったので
改めて良かったと実感する。
そんな私の顔を見て、いつもより少し近い距離で向き合っていた彼は
「俺、ほんと幸せ。」
と、さらにあったかい笑顔をくれた。
そして
「あかね…メリークリスマス。」
触れるだけの、口づけ。
あまりにも自然すぎて、身構える暇も驚く隙もなかった。
頭がボンヤリする。
間抜けな顔をしていたようで、真野くんがくすりと笑う。
「やっぱ、面白いね。あかねの事、好きになって良かった」
「…………!!」
顔から火が出そう。
クリスマスの力でしょうか。
今日見たあの、映画の奇跡のように
私たちの赤い糸も、これからずっとーーー紡がれていきますように。
そんな願いを込めて、もう一度。
メリークリスマス。