こんな恋のはじまりがあってもいい
その日は日曜日で。
翌日すぐに彼女と顔を会わせることを思うと、かなりキツい心情だ。
気まずい。
非常に、気まずい。
何も無いはずなのに
この間、彼女を信じると決めたはずなのに。
自分でも情けない。
だけど、見てしまったものはしょうがない。
彼女はそんなことする人じゃない。
彼女はーーーその辛さを知ってるじゃないか。
朝になっても、全く気分が晴れず。
メッセージも開く気になれなかった。
何事もないフリができるほど、
俺は大人じゃない。
大人ならーーーそんなことも笑って待っていられるんだろうか。
ああ、もどかしい。
吐き気がする。
「ちょっと、アンタいつまで寝てんの」
姉のミサが、布団を引っぺがしにやってきた。
「るせー」
布団越しに抵抗するも、力の強い姉は見事に俺の布団を容赦なくめくり上げる。
「朝ごはん、いい加減食べないと遅刻するよって……」
そう言いながら俺の顔を見たミサは、一瞬動きを止めた。
「……んだよ。」
「アンタ、熱あるんじゃない?」
吐き気はどうやら、流行りの風邪の症状らしい。
ピッ、と音がした体温計を脇から抜き取り、数字を確認する。
「……見るんじゃなかった」
ミサは力なく布団にうなだれる俺の手からそれを取り上げ、変わりに冷却シートを手渡す。
「風邪、決定」
なんてことだ。
おとなしく寝てろ、と頭から布団を押し付けられ
俺はブツブツぼやきながらも、いつの間にか眠ってしまった。
どのくらい寝ていたのだろうか
窓から夕日が差し込んでいる。
枕元に響く振動で、目が覚めた。
少し気だるい手で、それを掴み
ぼんやりした頭でディスプレイの表示を見る。
「…………」
あかねからの、着信だった。
他にもメッセージの通知が数件あるようだ。
昨日から連絡がつかないこと、学校を休んだこと
それについて彼女や友達からの心配するメッセージだった。
簡単に返事を送り、天井を見上げる。
幸い、熱は下がったようだ。
視界が少しずつクリアになる。
頭も冷静になったようだ。
熱のおかげでしばらく忘れていたが
この間のあれは何だったのか。
ーーー明日、素直に彼女に聞こう。
そうすれば、きっとこれまでの違和感についても分かる気がする。
そんな、気がした。
以前、彼女に告白をした時にも決めたじゃないか。
彼女がどう思っても、それを受け止めると。
俺が、彼女を大事に思う気持ちに変わりはない。
それだけで、十分だ。
翌日。
少し気恥ずかしい気持ちを隠して、教室に入る。
途端に友人たちに小突かれる。
「何サボってんだよ」
「いや、今回マジで熱出たんだって」
そんなくだらない話をしながら、さりげなく彼女を目で探す。
まだ来てないようだ。
荷物を片付けているうちに、あかねがやってきた。
「あー!真野くん!!」
入ってきたその足で俺の前まで走り寄り、俺の顔を覗き込む。
「おはよ、大丈夫だった?」
周りがニヤニヤするのを見なかったことにして、俺は普通を装って答える。
「うん、もう大丈夫。」
久しぶりに風邪ひいた〜なんて冗談めかして笑っていたけど
内心はいつ話を切り出そうかと焦っていた。
すると彼女の方から
「今日は一緒に帰れるから。それと…」
と、言いながらノートを手渡してくれた。
「これ、真野くん用に書いたから。急いで写さなくてもいいからね」
それを受け取った時、妙な安心感が俺の中に沸いた。
なんて単純なんだ。
自分でも笑ってしまう。
「ありがと」
「どういたしまして」
それじゃ、と彼女は自分の荷物を置きに離れたが
俺はもうそれだけで十分だった。
翌日すぐに彼女と顔を会わせることを思うと、かなりキツい心情だ。
気まずい。
非常に、気まずい。
何も無いはずなのに
この間、彼女を信じると決めたはずなのに。
自分でも情けない。
だけど、見てしまったものはしょうがない。
彼女はそんなことする人じゃない。
彼女はーーーその辛さを知ってるじゃないか。
朝になっても、全く気分が晴れず。
メッセージも開く気になれなかった。
何事もないフリができるほど、
俺は大人じゃない。
大人ならーーーそんなことも笑って待っていられるんだろうか。
ああ、もどかしい。
吐き気がする。
「ちょっと、アンタいつまで寝てんの」
姉のミサが、布団を引っぺがしにやってきた。
「るせー」
布団越しに抵抗するも、力の強い姉は見事に俺の布団を容赦なくめくり上げる。
「朝ごはん、いい加減食べないと遅刻するよって……」
そう言いながら俺の顔を見たミサは、一瞬動きを止めた。
「……んだよ。」
「アンタ、熱あるんじゃない?」
吐き気はどうやら、流行りの風邪の症状らしい。
ピッ、と音がした体温計を脇から抜き取り、数字を確認する。
「……見るんじゃなかった」
ミサは力なく布団にうなだれる俺の手からそれを取り上げ、変わりに冷却シートを手渡す。
「風邪、決定」
なんてことだ。
おとなしく寝てろ、と頭から布団を押し付けられ
俺はブツブツぼやきながらも、いつの間にか眠ってしまった。
どのくらい寝ていたのだろうか
窓から夕日が差し込んでいる。
枕元に響く振動で、目が覚めた。
少し気だるい手で、それを掴み
ぼんやりした頭でディスプレイの表示を見る。
「…………」
あかねからの、着信だった。
他にもメッセージの通知が数件あるようだ。
昨日から連絡がつかないこと、学校を休んだこと
それについて彼女や友達からの心配するメッセージだった。
簡単に返事を送り、天井を見上げる。
幸い、熱は下がったようだ。
視界が少しずつクリアになる。
頭も冷静になったようだ。
熱のおかげでしばらく忘れていたが
この間のあれは何だったのか。
ーーー明日、素直に彼女に聞こう。
そうすれば、きっとこれまでの違和感についても分かる気がする。
そんな、気がした。
以前、彼女に告白をした時にも決めたじゃないか。
彼女がどう思っても、それを受け止めると。
俺が、彼女を大事に思う気持ちに変わりはない。
それだけで、十分だ。
翌日。
少し気恥ずかしい気持ちを隠して、教室に入る。
途端に友人たちに小突かれる。
「何サボってんだよ」
「いや、今回マジで熱出たんだって」
そんなくだらない話をしながら、さりげなく彼女を目で探す。
まだ来てないようだ。
荷物を片付けているうちに、あかねがやってきた。
「あー!真野くん!!」
入ってきたその足で俺の前まで走り寄り、俺の顔を覗き込む。
「おはよ、大丈夫だった?」
周りがニヤニヤするのを見なかったことにして、俺は普通を装って答える。
「うん、もう大丈夫。」
久しぶりに風邪ひいた〜なんて冗談めかして笑っていたけど
内心はいつ話を切り出そうかと焦っていた。
すると彼女の方から
「今日は一緒に帰れるから。それと…」
と、言いながらノートを手渡してくれた。
「これ、真野くん用に書いたから。急いで写さなくてもいいからね」
それを受け取った時、妙な安心感が俺の中に沸いた。
なんて単純なんだ。
自分でも笑ってしまう。
「ありがと」
「どういたしまして」
それじゃ、と彼女は自分の荷物を置きに離れたが
俺はもうそれだけで十分だった。