こんな恋のはじまりがあってもいい
番外編ーーー圭太のハナシ。
ーーー今だから冷静になれることがあるーーー
けれどそれは、あまりにも当たり前のことで。
今思えば反省することばかりなんだけど、『それ』がなければ今の俺はいなかっただろうから
人生に無駄な出来事なんて無いんだろうな、と思うことにした。
「……東くんって、好きな人いるの?」
ふいに出された話題。
そう、あれはとある放課後の帰り道。
テスト前で部活が休みになり、まっすぐ家へ帰る途中の出来事だった。
「……へ?」
俺は間の抜けた声をあげて、隣を歩く彼女を見た。
彼女はーーー吉野ミキ。確かアイツと同じクラスの女子だ。
いつもアイツと仲良くしているところへ、俺がノートやワークを借りにいくもんだから
なんとなく顔見知り程度に仲良くはなっていた。
友達の友達は、友達ってやつだ。
それが、どうしてこうなるのか。
帰り道、偶然鉢合わせて
「今日はアイツと帰るんじゃねーの?」
と何気なく尋ねたら、用事があるとかなんとかで一緒に帰れないって話で。
帰る方向が同じだからってことで、一緒に帰りながら世間話をしている最中だった。
俺の間抜けな反応に、彼女は気まずそうに顔をうつむかせて
「東くん、あかねと仲良しだからさ……」
それは一体、何を言いたいのだろうか。
「そりゃ、アイツとは中学からあんな感じだからな」
そうとしか言いようがない。
中三で同じクラスになって、驚くほどにウマの合う相手だった。
会話のテンポが良くていつも話がはずむ。
毎日当たり前のように顔を合わせてはバカなやりとりを楽しんでいた。
卒業したらこんなバカなやりとりも終わりだな、と憎まれ口を叩いたこともあったが
「高校も一緒だったらクラス変わっても顔合わせるだろうし何も変わらないよ」
なんて笑って、こっちのしんみりした雰囲気すら吹き飛ばしやがる。
最高に、面白いヤツだと思っていた。
ただ、それだけだ。
だからーーー本当にクラスが変わっても相変わらず顔を見に行っては同じことを繰り返している。
アイツも別に嫌がってないから、それでいいと思っていた。
それ以上何も求めるものなんてない、と。
友達なんて、楽しけりゃいいんじゃないのか?
そんな俺の返事に、彼女はうんと頷いて。
「なんか、羨ましいなって思ったの」
「?何を」
「……だって、楽しそうなんだもん」
「お前も一緒に楽しんでるだろ」
「そうなんだけど」
それが何故、さっきの質問と関係あるのか。
今思えば、俺がバカなだけだった。
「……わたし、東くんともっと仲良くなりたいなって思って」
「……?」
同じスピードで歩いていた足を止め、彼女はこちらをまっすぐ見る。
「東くんのことが、好きなの」
え?
「だから、好きな人が居ないんだったら……付き合ってもらえないかな、と思って」
まさかと思った。
好きとか嫌いとか惚れたとかそんな話、面白半分でネタにすることはあっても
まさか自分の身に降りかかるなんて思いもしなかった。
しかも、彼女は普通に可愛い。
そして性格も良い子だ。アイツと仲良くしてるから良く分かる。
そんな子に好きと言われて舞い上がらない男子なんかいるのか。
今までにないくらい、心臓が動いている気がした。
試合の緊張なんかとは違う種類のーーー
「……どう、かな?」
遠慮がちに聞いてくる彼女が可愛くて、ついほだされてしまった。
「……ん。まあ……今好きな人って居ないから……俺で良ければ……その」
「ほんと!?」
ぱぁ、と花が咲いたように目をキラキラさせたミキの顔を見て、思わず頬が緩んでしまう自分に気付く。
そうか、これが青春ってヤツか。
付き合うとかって良くわからないけど、なんだか彼女とこうして話しながら歩く時間は楽しいと思った。
こんな日が続くなら、悪くないと思ったんだ。
アイツと話す時の楽しさとは、また違う感じの。
それが単なる興味なのか恋なのか、その時の俺はまだ何も知らなかった。
けれどそれは、あまりにも当たり前のことで。
今思えば反省することばかりなんだけど、『それ』がなければ今の俺はいなかっただろうから
人生に無駄な出来事なんて無いんだろうな、と思うことにした。
「……東くんって、好きな人いるの?」
ふいに出された話題。
そう、あれはとある放課後の帰り道。
テスト前で部活が休みになり、まっすぐ家へ帰る途中の出来事だった。
「……へ?」
俺は間の抜けた声をあげて、隣を歩く彼女を見た。
彼女はーーー吉野ミキ。確かアイツと同じクラスの女子だ。
いつもアイツと仲良くしているところへ、俺がノートやワークを借りにいくもんだから
なんとなく顔見知り程度に仲良くはなっていた。
友達の友達は、友達ってやつだ。
それが、どうしてこうなるのか。
帰り道、偶然鉢合わせて
「今日はアイツと帰るんじゃねーの?」
と何気なく尋ねたら、用事があるとかなんとかで一緒に帰れないって話で。
帰る方向が同じだからってことで、一緒に帰りながら世間話をしている最中だった。
俺の間抜けな反応に、彼女は気まずそうに顔をうつむかせて
「東くん、あかねと仲良しだからさ……」
それは一体、何を言いたいのだろうか。
「そりゃ、アイツとは中学からあんな感じだからな」
そうとしか言いようがない。
中三で同じクラスになって、驚くほどにウマの合う相手だった。
会話のテンポが良くていつも話がはずむ。
毎日当たり前のように顔を合わせてはバカなやりとりを楽しんでいた。
卒業したらこんなバカなやりとりも終わりだな、と憎まれ口を叩いたこともあったが
「高校も一緒だったらクラス変わっても顔合わせるだろうし何も変わらないよ」
なんて笑って、こっちのしんみりした雰囲気すら吹き飛ばしやがる。
最高に、面白いヤツだと思っていた。
ただ、それだけだ。
だからーーー本当にクラスが変わっても相変わらず顔を見に行っては同じことを繰り返している。
アイツも別に嫌がってないから、それでいいと思っていた。
それ以上何も求めるものなんてない、と。
友達なんて、楽しけりゃいいんじゃないのか?
そんな俺の返事に、彼女はうんと頷いて。
「なんか、羨ましいなって思ったの」
「?何を」
「……だって、楽しそうなんだもん」
「お前も一緒に楽しんでるだろ」
「そうなんだけど」
それが何故、さっきの質問と関係あるのか。
今思えば、俺がバカなだけだった。
「……わたし、東くんともっと仲良くなりたいなって思って」
「……?」
同じスピードで歩いていた足を止め、彼女はこちらをまっすぐ見る。
「東くんのことが、好きなの」
え?
「だから、好きな人が居ないんだったら……付き合ってもらえないかな、と思って」
まさかと思った。
好きとか嫌いとか惚れたとかそんな話、面白半分でネタにすることはあっても
まさか自分の身に降りかかるなんて思いもしなかった。
しかも、彼女は普通に可愛い。
そして性格も良い子だ。アイツと仲良くしてるから良く分かる。
そんな子に好きと言われて舞い上がらない男子なんかいるのか。
今までにないくらい、心臓が動いている気がした。
試合の緊張なんかとは違う種類のーーー
「……どう、かな?」
遠慮がちに聞いてくる彼女が可愛くて、ついほだされてしまった。
「……ん。まあ……今好きな人って居ないから……俺で良ければ……その」
「ほんと!?」
ぱぁ、と花が咲いたように目をキラキラさせたミキの顔を見て、思わず頬が緩んでしまう自分に気付く。
そうか、これが青春ってヤツか。
付き合うとかって良くわからないけど、なんだか彼女とこうして話しながら歩く時間は楽しいと思った。
こんな日が続くなら、悪くないと思ったんだ。
アイツと話す時の楽しさとは、また違う感じの。
それが単なる興味なのか恋なのか、その時の俺はまだ何も知らなかった。