こんな恋のはじまりがあってもいい
その日の帰りは、なんだか足が地についていないような
浮ついた気分で過ごした。
だけど
付き合うことになったからといって
これといって何があるワケでもない。
翌日も、いつもと同じようにアイツらのクラスへ顔を出す。
もちろん、いつも通りワークをせがむのだけど。
ミキが、嬉しそうに話しかけてくる。
「もーなあに?またノート?」
いつもより距離が近く感じるのは気のせいだろうか?
付き合うことになったんだから、近いのは当たり前なのかもしれない。
「ワークやるの忘れててさ〜ミキはどうせやってないだろ?」
「失礼ねっ」
そういえばミキも、こうして俺の話にノッてくれるよな。
だから近く感じるんだ。
アイツと同じ。だから仲も良いのだろう。
ただ、今までアイツーーー市原に借りてたワークを
彼女だからって突然ミキから借りるのも不自然極まりなく。
いくら付き合うことになったからって、そこまで急激に関係を変えたくないというホンネもあった。
少しだけ、気まずかったんだ。
市原に、ミキとのことを知られるのが。
けれど
「あー市原、俺ワーク借りたまんまだわ。まだ写せてないからもうちょっと待って」
不意に聞きなれない声が入ってきた。
誰だ?
「…真野、くん?」
市原が振り返り声の主を確認する。
俺の他にアイツのワークを狙っているヤツがいようとは。
「マジか!先越されたかー!!」
腹立たしい。
アイツの頭の良さを知ってるヤツがいるなんて。
アイツが簡単にワークを貸すわけ無いのに。
無性にモヤモヤした。
ミキはそんな俺もいつも通りだと思ったようで
「残念だったねー」
と笑っていたが、俺はこのイラつきが一体何なのか分からず
とりあえず流れに任せてその場を離れることにした。
頭を冷やすんだ。
別に、アイツが誰にワークを貸してもいいじゃないか。
同じクラスのやつが借りたがるのは当たり前じゃないか。
何を俺はイラついているのか。
「馬鹿らしい」
大きなため息をついて、俺は自分の教室へと戻った。
ワークは自力でやるしかない。
たまたまだ。今日は運が悪かったと思うことにしよう。
放課後。
ミキが校門のところで待っていた。
「教室まで行くのは恥ずかしくて」
なんとなく、その気持ちは分かる。
堂々とすりゃいいんだろうけど、
みんなに冷やかされるのも良い気分だとは思えない。
ただ、ひとつだけ気がかりがあった。
「……市原には言ったのか?いつも一緒に帰ってただろ」
彼女は俺の質問に首を横に振る。
「なんとなく、まだ」
「だよな」
きっと、知ってたら
アイツはもっと違う態度を取るだろう。
余計な気を回されるのも面倒だ。
そんなことより、と話を切り替えて
世間話をしながら二人で歩く。
この雰囲気はとても心地よいのだけれど
どこか、胸に引っかかるものがある。
何だろう。
ミキはとても面白い子で、聞き上手だ。
そりゃアイツと仲良くなるはずだ、と妙に納得してしまった。
似てるのかも、しれない。
ふいにそう思った。
雰囲気はどちらかというと、ミキの方が女らしくて可愛らしい。
だけど、話すときの勢いや嬉しそうに頷くときのタイミングが
どことなく、似てるんだ。
こんな子も、いるんだな。
そしてそんな彼女が自分の隣を歩いていることが
とても、不思議だった。
「……でね、あかねがその話を聞いて……」
ミキの口から自然とこぼれるその名前。
そりゃ毎日一緒にいるから、当たり前なんだろうけど。
「……でしょ、おもしろいよね」
うん、と頷きながらも
俺は頭の中で別の事を考えていた。
遠い。
距離を、感じる。
近いのに、遠い。
不思議な感じだ。
「……もう、聞いてる?」
「え、あぁ、聞いてるよ」
それでね、と話を続ける彼女をとても可愛いと思う反面
自分の心はどこか違うものを見ているように感じた。
忘れよう。
今は、目の前の彼女との時間を楽しみたい。
そう思い、俺は深く考えることをやめた。
浮ついた気分で過ごした。
だけど
付き合うことになったからといって
これといって何があるワケでもない。
翌日も、いつもと同じようにアイツらのクラスへ顔を出す。
もちろん、いつも通りワークをせがむのだけど。
ミキが、嬉しそうに話しかけてくる。
「もーなあに?またノート?」
いつもより距離が近く感じるのは気のせいだろうか?
付き合うことになったんだから、近いのは当たり前なのかもしれない。
「ワークやるの忘れててさ〜ミキはどうせやってないだろ?」
「失礼ねっ」
そういえばミキも、こうして俺の話にノッてくれるよな。
だから近く感じるんだ。
アイツと同じ。だから仲も良いのだろう。
ただ、今までアイツーーー市原に借りてたワークを
彼女だからって突然ミキから借りるのも不自然極まりなく。
いくら付き合うことになったからって、そこまで急激に関係を変えたくないというホンネもあった。
少しだけ、気まずかったんだ。
市原に、ミキとのことを知られるのが。
けれど
「あー市原、俺ワーク借りたまんまだわ。まだ写せてないからもうちょっと待って」
不意に聞きなれない声が入ってきた。
誰だ?
「…真野、くん?」
市原が振り返り声の主を確認する。
俺の他にアイツのワークを狙っているヤツがいようとは。
「マジか!先越されたかー!!」
腹立たしい。
アイツの頭の良さを知ってるヤツがいるなんて。
アイツが簡単にワークを貸すわけ無いのに。
無性にモヤモヤした。
ミキはそんな俺もいつも通りだと思ったようで
「残念だったねー」
と笑っていたが、俺はこのイラつきが一体何なのか分からず
とりあえず流れに任せてその場を離れることにした。
頭を冷やすんだ。
別に、アイツが誰にワークを貸してもいいじゃないか。
同じクラスのやつが借りたがるのは当たり前じゃないか。
何を俺はイラついているのか。
「馬鹿らしい」
大きなため息をついて、俺は自分の教室へと戻った。
ワークは自力でやるしかない。
たまたまだ。今日は運が悪かったと思うことにしよう。
放課後。
ミキが校門のところで待っていた。
「教室まで行くのは恥ずかしくて」
なんとなく、その気持ちは分かる。
堂々とすりゃいいんだろうけど、
みんなに冷やかされるのも良い気分だとは思えない。
ただ、ひとつだけ気がかりがあった。
「……市原には言ったのか?いつも一緒に帰ってただろ」
彼女は俺の質問に首を横に振る。
「なんとなく、まだ」
「だよな」
きっと、知ってたら
アイツはもっと違う態度を取るだろう。
余計な気を回されるのも面倒だ。
そんなことより、と話を切り替えて
世間話をしながら二人で歩く。
この雰囲気はとても心地よいのだけれど
どこか、胸に引っかかるものがある。
何だろう。
ミキはとても面白い子で、聞き上手だ。
そりゃアイツと仲良くなるはずだ、と妙に納得してしまった。
似てるのかも、しれない。
ふいにそう思った。
雰囲気はどちらかというと、ミキの方が女らしくて可愛らしい。
だけど、話すときの勢いや嬉しそうに頷くときのタイミングが
どことなく、似てるんだ。
こんな子も、いるんだな。
そしてそんな彼女が自分の隣を歩いていることが
とても、不思議だった。
「……でね、あかねがその話を聞いて……」
ミキの口から自然とこぼれるその名前。
そりゃ毎日一緒にいるから、当たり前なんだろうけど。
「……でしょ、おもしろいよね」
うん、と頷きながらも
俺は頭の中で別の事を考えていた。
遠い。
距離を、感じる。
近いのに、遠い。
不思議な感じだ。
「……もう、聞いてる?」
「え、あぁ、聞いてるよ」
それでね、と話を続ける彼女をとても可愛いと思う反面
自分の心はどこか違うものを見ているように感じた。
忘れよう。
今は、目の前の彼女との時間を楽しみたい。
そう思い、俺は深く考えることをやめた。