こんな恋のはじまりがあってもいい
相変わらずな毎日の、はず。
あれから、ミキと帰ることがなくなった。
理由は分かってるし、こちらからわざわざ地雷を踏みに行くことでもない。
「察した」ということで、彼女と距離を置くことが多くなった。
極端にぎこちない訳じゃない。
お弁当も一緒に食べるし、他愛ない話もして笑ったりしてる。
だけど、以前は大半を占めていた
『誰それがカッコイイ』というような
恋バナは、自然に減った。
どちらが意識して避けているのかは、分からない。
きっと、同じ気持ちなんだろう。
ミキは可愛くて優しくて、いい子。
ちょっと天然なところも好き。
だから、今回のことはちょっと悲しい気持ちもあるけど
私は彼女を嫌いにはなれない。
きっと、彼女なりに思うことがあるんだと思う。
私は、知らないふりをして
適当に毎日楽しんでればいい。
ーーいつか、彼女から話してくれたらいいなーー
圭太は毎度図々しく何も考えずに、私たちを呼び出しノートやワークを貸せ貸せとうるさい。
私が二人のことを気づいてないとでも思ってるんだろうか。
それとも単にニブいだけなのか。
毎日とはいかずとも日々繰り返されるこのパターン、
前は普通に楽しめていたけどーー今は。
だんだん鬱陶しくなってきている。
真野くんが、たまにタイミングを見計らって声をかけてくれたり、
アイツより先に「ワーク貸して」と言ってくれるのが
本当にありがたかった。
でも、真野くんが
毎日きちんと勉強していることも、私は薄々勘付いている。
どうして助けてくれるんだろう、
アイツに対する嫌がらせ、かな。
だってーー真野くんがミキちゃんを好きだったとしたら
圭太が美味しいとこ取りするのは腹が立つと思うから。
でも結局、私がワーク貸せないって時は
ミキちゃんが貸したりするから、逆効果な気もする。
それはそれで申し訳ないかな。
ぐるぐると考えながら、毎日が同じように過ぎていった。
一週間ほど経ったある日。
日直だった私は、すべての作業を終えて帰るところだった。
一度帰ろうとして、日誌を机に忘れてきたことに気がついた。
「やば」
日直の仕事の締めでもある日誌を提出しておかないと
サボったとみなされて明日も日直を繰り返す羽目になる。
それだけは勘弁。
私は急いで教室へと引き返した。
慌ててドアを勢い良く開けると
ミキがまだ教室に残っていた。
彼女は窓に背中を預けるようにしてこちらを向いて座っていて
その隣の机に軽く腰をかけていたのは
「あ」
真野くん、だった。
一体どういう状況なのかよく飲み込めずに、
それでもーーなんとなく邪魔した、という空気だけは読んで。
「……あー、ごめん。日誌忘れて取りにきただけだから」
はは、となんとも良く分からない声と作り笑いで
そそくさと教卓の上に置かれた日誌を掴み取り、二人に背中を向ける。
「じゃあね」
素知らぬふりをしてドアと静かに閉める。
変な緊張で吐きそうになった。
良く分からない。
なぜ二人で居たのか。
クラスメイトだし、別に偶然、二人だったのかもしれない。
自分だって、真野くんと二人で帰ったこともあるし。
おかしなことじゃない、はず。
そう思おうとしているのに、
胸のモヤは晴れなかった。
そこからどう家に帰ったのか、あまり覚えていない。
ただ、ひとつだけ思ったことがある。
しばらく、ココアは飲みたくない。
理由は分かってるし、こちらからわざわざ地雷を踏みに行くことでもない。
「察した」ということで、彼女と距離を置くことが多くなった。
極端にぎこちない訳じゃない。
お弁当も一緒に食べるし、他愛ない話もして笑ったりしてる。
だけど、以前は大半を占めていた
『誰それがカッコイイ』というような
恋バナは、自然に減った。
どちらが意識して避けているのかは、分からない。
きっと、同じ気持ちなんだろう。
ミキは可愛くて優しくて、いい子。
ちょっと天然なところも好き。
だから、今回のことはちょっと悲しい気持ちもあるけど
私は彼女を嫌いにはなれない。
きっと、彼女なりに思うことがあるんだと思う。
私は、知らないふりをして
適当に毎日楽しんでればいい。
ーーいつか、彼女から話してくれたらいいなーー
圭太は毎度図々しく何も考えずに、私たちを呼び出しノートやワークを貸せ貸せとうるさい。
私が二人のことを気づいてないとでも思ってるんだろうか。
それとも単にニブいだけなのか。
毎日とはいかずとも日々繰り返されるこのパターン、
前は普通に楽しめていたけどーー今は。
だんだん鬱陶しくなってきている。
真野くんが、たまにタイミングを見計らって声をかけてくれたり、
アイツより先に「ワーク貸して」と言ってくれるのが
本当にありがたかった。
でも、真野くんが
毎日きちんと勉強していることも、私は薄々勘付いている。
どうして助けてくれるんだろう、
アイツに対する嫌がらせ、かな。
だってーー真野くんがミキちゃんを好きだったとしたら
圭太が美味しいとこ取りするのは腹が立つと思うから。
でも結局、私がワーク貸せないって時は
ミキちゃんが貸したりするから、逆効果な気もする。
それはそれで申し訳ないかな。
ぐるぐると考えながら、毎日が同じように過ぎていった。
一週間ほど経ったある日。
日直だった私は、すべての作業を終えて帰るところだった。
一度帰ろうとして、日誌を机に忘れてきたことに気がついた。
「やば」
日直の仕事の締めでもある日誌を提出しておかないと
サボったとみなされて明日も日直を繰り返す羽目になる。
それだけは勘弁。
私は急いで教室へと引き返した。
慌ててドアを勢い良く開けると
ミキがまだ教室に残っていた。
彼女は窓に背中を預けるようにしてこちらを向いて座っていて
その隣の机に軽く腰をかけていたのは
「あ」
真野くん、だった。
一体どういう状況なのかよく飲み込めずに、
それでもーーなんとなく邪魔した、という空気だけは読んで。
「……あー、ごめん。日誌忘れて取りにきただけだから」
はは、となんとも良く分からない声と作り笑いで
そそくさと教卓の上に置かれた日誌を掴み取り、二人に背中を向ける。
「じゃあね」
素知らぬふりをしてドアと静かに閉める。
変な緊張で吐きそうになった。
良く分からない。
なぜ二人で居たのか。
クラスメイトだし、別に偶然、二人だったのかもしれない。
自分だって、真野くんと二人で帰ったこともあるし。
おかしなことじゃない、はず。
そう思おうとしているのに、
胸のモヤは晴れなかった。
そこからどう家に帰ったのか、あまり覚えていない。
ただ、ひとつだけ思ったことがある。
しばらく、ココアは飲みたくない。