いちばん、すきなひと。
今だから、分かることー野々村目線ー
今だから、分かる。
あの時の自分たちは、幼すぎて
本当に大切なものほど、遠ざけようとした。
初めて、学校の外で会った時
非日常感はあれど彼女は、ごく普通の女子だった。
ただ、他よりかなり気さくな印象だった。
他のヤツらが親しげに話すのを見て
自分も自然とそこに入りたいと思った。
(仲良くなったら面白そうだな、アイツ)
ただ、それだけだった。
けれど
その時からもう、始まっていたのかもしれない。
何かあるたびに、話しかけた。
大した用がなくても、声をかけてみた。
反応が面白く、ずっと顔を突き合わせても飽きない。
男女の意識なんて欠片もなさそうな彼女のフランクさに
安心しきっていた。
だけど。
ほんの少しの会話から
『友達』の線引きをしてしまって以来
どうすれば良いのか、迷った。
今思えば、些細なことだ。
だけど当時の自分には
これ以上踏み込むな、と言われたような気がした。
それから
彼女はことあるごとに、俺との距離を保とうとする。
余所余所しい態度を取る。
目に見えない、何かが
二人の間にあるような気がした。
これはもう、
近づくのを諦めたほうが良さそうだ。
そう、思ったんだ。
だけど、せめて
学校ではクラスメイトとして
楽しくふざけあいたい。
ただ、それだけは思った。
この感情が何なのか
当時の俺には、まだ知る由もなかった。
なのにーーーーー
何の偶然か。
少し気づいてしまう時が来る。
中3の合唱コンクール。
仲間が揉める。
間を取り持つのはもちろん、委員長のーーーみやのっち。
彼女は優しい。だからこそ
揉める相手にも寄り添うように、なだめるように
妥協案を出していく。
その姿に、惹かれた。
誰とも仲良くしようとする姿勢。
相手の立場を思いやる気持ち。
ああ、だからこそ彼女は
皆から好かれるんだ、と。
そして。
それを守りたいとーーー思った。
その一心で、彼女に助け舟を出した。
結果、彼女に涙を流させてしまうことになり
自分の不甲斐なさを痛感する。
だけど
あの日から俺は
彼女の側にいたいと、思ったんだ。
当時、興味本位で付き合った直子のことも
本当はあまり、知られたくなかった。
友達の彼氏として、さらに距離が開いてしまうのが
怖かった。
こうして、俺の心が彼女に向いているせいで
直子を傷つけてしまったこと。
本当に悪かったと思う。
けれど、直子との出会いがあったからこそ
彼女とのことも真剣に考えるようになったんだ。
それでも
俺のポジションが変わることはなく。
どうせこれ以上近づけないなら、
いっそのこと、親友のように
何でも話せる間柄になれば良いのでは?
その方が、きっと
長く側に居られる。
彼女を守ってやれる。
そう思うようになった。
それからだ。
俺の、長い道のりが始まったのは。
相変わらず、俺を信用してないのか
一定の距離を保つ彼女。
俺はめげずに、仲良くし続けた。
くだらないやり取りなら、彼女も楽しそうに受けてくれる。
会話のテンポも心地よい。
お互いに、同じことを思っていたりする。
なのに
どうして
どこか遠くに感じる瞬間が、度々ある。
彼女は一体、何を考えているのだろうか。
いつも弱さをみせまいと気張り、
それでも抱えきれないことくらい
見ていたら分かる。
なのにどうして、それを俺に分けてくれないのか。
いつも、もどかしかった。
でもそれは
どうやら俺も同じだったらしい。
結局のところ。
俺も、肝心なところで本心を隠す癖があるからだ。
似ているのかも、しれない。
だからこそ、分かる事があるのだろうか。
俺はいつも、模範解答を基準に
こうすれば大丈夫、という予測の元に
行動している節がある。
それはとても、優等生としては文句のない姿なのだが
時として、自分の本意ではない事もしばしばある。
けれどそれは、
自分の中の問題であり
いかに上手く折り合いをつけるかであって
そうするのが、大人だと
カッコイイものだと、信じていた。
そんなものは、単なる理想論だ。
実際はもっと、複雑である。
その事に気づくのはーーーもっと、後の話だ。
あの時の自分たちは、幼すぎて
本当に大切なものほど、遠ざけようとした。
初めて、学校の外で会った時
非日常感はあれど彼女は、ごく普通の女子だった。
ただ、他よりかなり気さくな印象だった。
他のヤツらが親しげに話すのを見て
自分も自然とそこに入りたいと思った。
(仲良くなったら面白そうだな、アイツ)
ただ、それだけだった。
けれど
その時からもう、始まっていたのかもしれない。
何かあるたびに、話しかけた。
大した用がなくても、声をかけてみた。
反応が面白く、ずっと顔を突き合わせても飽きない。
男女の意識なんて欠片もなさそうな彼女のフランクさに
安心しきっていた。
だけど。
ほんの少しの会話から
『友達』の線引きをしてしまって以来
どうすれば良いのか、迷った。
今思えば、些細なことだ。
だけど当時の自分には
これ以上踏み込むな、と言われたような気がした。
それから
彼女はことあるごとに、俺との距離を保とうとする。
余所余所しい態度を取る。
目に見えない、何かが
二人の間にあるような気がした。
これはもう、
近づくのを諦めたほうが良さそうだ。
そう、思ったんだ。
だけど、せめて
学校ではクラスメイトとして
楽しくふざけあいたい。
ただ、それだけは思った。
この感情が何なのか
当時の俺には、まだ知る由もなかった。
なのにーーーーー
何の偶然か。
少し気づいてしまう時が来る。
中3の合唱コンクール。
仲間が揉める。
間を取り持つのはもちろん、委員長のーーーみやのっち。
彼女は優しい。だからこそ
揉める相手にも寄り添うように、なだめるように
妥協案を出していく。
その姿に、惹かれた。
誰とも仲良くしようとする姿勢。
相手の立場を思いやる気持ち。
ああ、だからこそ彼女は
皆から好かれるんだ、と。
そして。
それを守りたいとーーー思った。
その一心で、彼女に助け舟を出した。
結果、彼女に涙を流させてしまうことになり
自分の不甲斐なさを痛感する。
だけど
あの日から俺は
彼女の側にいたいと、思ったんだ。
当時、興味本位で付き合った直子のことも
本当はあまり、知られたくなかった。
友達の彼氏として、さらに距離が開いてしまうのが
怖かった。
こうして、俺の心が彼女に向いているせいで
直子を傷つけてしまったこと。
本当に悪かったと思う。
けれど、直子との出会いがあったからこそ
彼女とのことも真剣に考えるようになったんだ。
それでも
俺のポジションが変わることはなく。
どうせこれ以上近づけないなら、
いっそのこと、親友のように
何でも話せる間柄になれば良いのでは?
その方が、きっと
長く側に居られる。
彼女を守ってやれる。
そう思うようになった。
それからだ。
俺の、長い道のりが始まったのは。
相変わらず、俺を信用してないのか
一定の距離を保つ彼女。
俺はめげずに、仲良くし続けた。
くだらないやり取りなら、彼女も楽しそうに受けてくれる。
会話のテンポも心地よい。
お互いに、同じことを思っていたりする。
なのに
どうして
どこか遠くに感じる瞬間が、度々ある。
彼女は一体、何を考えているのだろうか。
いつも弱さをみせまいと気張り、
それでも抱えきれないことくらい
見ていたら分かる。
なのにどうして、それを俺に分けてくれないのか。
いつも、もどかしかった。
でもそれは
どうやら俺も同じだったらしい。
結局のところ。
俺も、肝心なところで本心を隠す癖があるからだ。
似ているのかも、しれない。
だからこそ、分かる事があるのだろうか。
俺はいつも、模範解答を基準に
こうすれば大丈夫、という予測の元に
行動している節がある。
それはとても、優等生としては文句のない姿なのだが
時として、自分の本意ではない事もしばしばある。
けれどそれは、
自分の中の問題であり
いかに上手く折り合いをつけるかであって
そうするのが、大人だと
カッコイイものだと、信じていた。
そんなものは、単なる理想論だ。
実際はもっと、複雑である。
その事に気づくのはーーーもっと、後の話だ。