私と王子様のプロローグ


酒井は拗ねた顔をしつつも別段気にしてないのは分かる。


「あ、分かった。話題の人気作家の担当編集になったから緊張してるんでしょー?」


「水野さん担当変わったんすか?どの作家さん?」


「蓮見先生」


「はす……み先生って、あああの!?蓮見先生?」


「杉本さんの後任で私が担当することになったの」


酒井は蓮見先生のファンだったのか、しきりにすげぇ羨ましいと繰り返す。


「俺、一回だけ運よく蓮見先生に会ったことあるんですけど、こんな新人にも優しく接してくれて」


それ以来さらにファンになったんだと目を輝かせながら語り始めた。


蓮見先生は年下だろうが年上だろうが、分け隔てなくコミュニケーションをとる人だ。


いくら人気が出ても奢らないところは本当に尊敬する。


「で、実際どうなの?蓮見先生と会って」


「普通に仕事の話をして終わったから、特には。淹れてくれたコーヒーはすごい美味しかった」


「うわぁ俺も蓮見先生のコーヒー飲みたい!今度俺も連れていってください」


「私も王子様が自らふるまってくれたコーヒー飲みたぁい」


先生はバリスタじゃないんだから、と窘めておく。


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