私と王子様のプロローグ
進捗状況を、聞かれてしまった。まあそうなりますよね。
神崎さんはビジネスの場で必要な愛想笑いは浮かべているものの、目が笑ってない。
「もう少し、時間をもらえると嬉しいんだけど。最終締め切りまでには間に合うようにするから」
蓮見先生が待たせてごめんね、と申し訳なさそうな表情をする。
通常なら蓮見先生は必ず締め切り通りに全て提出してくれるけど、この件ばかりは事情が違う。
契約締結までに予定より時間を要したせいでだいぶスケジュールが詰まってきてることは、遠回しに言われていた。
「いえ、こちらも無理を言ってしまい申し訳ありません」
神崎さんはこうなることもある程度予想出来ていたのか、特に表情を変えることもない。
「では先にクライアント様と話を詰めて第2弾以降の詳細が決定しましたのでそちらを先に説明します」
そうして終了予定時刻の5分前に話がまとまり、神崎さんを外まで送ろうと部屋を出たところで。
「水野梓さん」
「はい、なんでしょう?」
先生の部屋から死角になっている場所まで少し移動し、向かい合う。