私と王子様のプロローグ
この人も蓮見先生と別のベクトルで格好良い。切れ長の目元が知的でクールな印象を与えている。
いっそ神崎さん自身が広告のモデルになってもいいのにと頭の隅で考えていると。
「どうやって、先生を口説き落としたんだ?」
「……え?」
同い年だから敬語じゃなくなったことに関しては全然気にしない。
問題は発言の内容だ。先生を口説き落とした?どうやってこの件を説得させたのかってこと?
「先生と企画との向き合い方についてしっかり話し合った結果ですが」
「しっかり話し合った結果、か」
見定めるように神崎さんの瞳が細められる。間違ったことは言っていない。たいぶ遠回しな言い方だけど。
「綺麗な見た目してるし。そういう手練手管で落としたのかと」
そういう、が含む意味くらいさすがに分かる。神崎さんがこういう台詞を吐くことが意外だ。
「……もう戻っていいですか?」
「冗談ですよ、水野さん」
わずかに口角をあげて初対面の時の神崎さんに戻る。
「今後もよろしくお願いいたします。では」
エレベーターがきたところで、神崎さんは一瞬こちらを振り返ってから帰っていった。