私と王子様のプロローグ
あの蓮見先生の担当を務められるのであれば、断る理由はない。
「はい。ぜひ、私にやらせてください」
「水野ならそう言ってくれると思ってた。杉本から引き継ぎ資料を預かってるんだ」
芹澤部長に資料を渡され、その重みに改めて責任を感じる。
「で、着任と同時に第一ミッションを与える」
「第一ミッション?」
部長は今度は演技ではなく、本気で困ったような顔をした。
「お前も知ってるだろ?ウエディング企業のCMの件」
「ウェブCMをストーリー仕立てで何話かに分けて公開する、って案件ですよね」
その話ならだいぶ前から進んでいたはずだ。それをなぜ、今話題に出すのか。
答えはすぐに察しがついた。
「……脚本をお願いしている蓮見先生と、何かあったんですか?」
「そういうこと。だから水野、説得してなんとしてでもこの案件を成功させてくれ」
「先生が断ってる理由って?」
「自分で直接聞いた方が早い。じゃ、よろしくな!」
ちょっと部長、そう呼び止める前に誰かに電話をするために出ていってしまった。
一度引き受けた以上、やっぱり無理ですなんて言えない。担当として、一度蓮見先生にお会いしよう。
資料を大事に抱えなおして、仕事に戻った。