私と王子様のプロローグ


「梓はまだ仕事があるんだっけ?」


「そうですね。このあと会社に戻る予定です」


新入社員の子たちの進捗は気にかけてあげたいし、他にも細々とやることは残っている。


「忙しいね、梓は。せっかくだからこのまま夕食でも一緒にどうかと思ったのに」


「私より先生の方が段違いで忙しいでしょう。ちゃんと野菜食べてくださいね」


「心配してくれるなら梓が作ってよ」


ほんのり甘えたような声色。不意打ちのそれにグラッときたのは仕方がない。


「また今度、作りに来ます」


「来週のパーティーが終わった後は?」


「先生、数え切れないほどのお食事会に誘われていらっしゃいますよね。お忘れですか」


来週のパーティーは、業界最大手の出版社が開催するもの。


『最大規模の交流会』と謳っているだけあって、各出版社から広告代理店企業、関連事業を手掛けるベンチャー企業まで多くの人が参加する。


その交流会がお開きになったあとは各々食事会を開催し人脈を広げるまでがセットだ。


蓮見先生はパーティーの日程が決まった時からすでにいくつもお誘いを受けている。


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