私と王子様のプロローグ
「食事をろくに楽しめない宴に、行きたくはないな」
「そうおっしゃらずに」
「当日の楽しみといえば、梓のドレス姿が見られるってことだけか」
「笑わないでくださいね」
一応参加者はドレスコードが条件になっているため、来ていくつもりではいるけど。
「梓には寒色系が似合うよ、きっと」
「……参考にさせていただきます」
「それがいい。じゃあ仕事頑張って」
玄関で靴を履いたところで、鞄を手渡してくれる。
「お邪魔しました。蓮見先生はちゃんと休んでくださいよ。脚本をお任せしているこちらが言っても、説得力がありませんけど……」
「大丈夫。いってらっしゃい」
「い、いってきます?」
まるで蓮見先生の部屋が私の帰ってくる場所みたいな言い方。でもなんでだろう、全然嫌じゃない。
足取り軽く、会社へ戻ったのだった。