私と王子様のプロローグ
杉本さんは呆れたように肩を竦めてみせた。
「梓、このスーツどう思う?」
「とてもお似合いです。本当、雑誌の表紙を飾るモデルみたいで」
オリーブグレイの生地にさり気なく白のストライプが入り、インディゴのシャツとよく合っている。
ワンポイントでネクタイに刺繍があってお洒落だ。
ひと言でいうなら英国紳士。
スリーピースのスーツスタイルであることもそう思わせるのかもしれない。
「水野、褒めすぎると蓮見が調子に乗る」
「相変わらず手厳しいなぁ杉本さんは」
「なんとでも言え。ほら行くぞ。遅れるわけにはいかないんだ」
杉本さんの淡々とした言葉に、現実に引き戻される。
そうだ、これから重要なパーティーに出席するんだから気を引き締めないと。
マンションの地下駐車場まで行き、杉本さんの運転で会場まで向かう。
「梓、そんなに怖い顔をしてどうしたの」