私と王子様のプロローグ


蓮見先生はもうこういった場に慣れきっているはずだ。


海外メディアの取材にも応じ授賞式にも参加していて、色々な人に注目されることには慣れっこだろう。


でも、慣れているからってそれが好きかどうかは別だ。


「蓮見先生、もし何かあった時はすぐに合図をください」


「……俺の心配までしてくれなくても平気だって」


「そうやって強がるのも大概にしておけよ」


杉本さんが信号待ちの間チラッと振り返り、蓮見先生に意味ありげな視線を送る。


もしかしたら交流会や何かしらのイベントに参加したとき、蓮見先生に何かあったのかもしれない。


けど蓮見先生はサラッと忠告を受け流す。


「杉本さんも梓も挨拶回りとか色々あるんだから、そっちに集中してなよ」


「もちろんビジネスの場だ、そういうやり取りもこなすがお前ひとり放っておいたらどうなるか」


今回参加する企業全部が一流作家の蓮見先生と交流を持ちたいと思っている、と言っても過言ではない。


せめて名刺だけでもと列が形成されても不思議じゃない。



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