私と王子様のプロローグ



「二人とも心配性だな」


これくらいどうってことないのにと言いたげな表情。


蓮見先生が困ることのないようしっかり見ていなければと思っている間に車は駐車場へ。


「さ、お手をどうぞ?お姫様」


私側のドアを開け、王子様みたいに手を差し出してくれる蓮見先生。


「お姫様だなんて、私には縁遠い言葉ですよ」


蓮見先生は可愛い気のない台詞は気にせず私の手をとり、エスコートしてくれた。


そして受付前の自動ドアをくぐる瞬間そっと手を離して。


「今日はよろしくお願いします。水野さん」


ビジネスの場に立つ雰囲気を身に纏い、ピンと背筋を伸ばす先生。


受付を済ませ入り口付近でウェルカムドリンクを受け取った。


「……すごい人」


思わず声に出してしまうくらいには、会場の隅から隅まで人で埋まっていた。


見知った顔もちらほらいるけど、やはり知らない人の方が圧倒的に多い。


「ねぇ見て、蓮見先生よ」


近くにいた誰かがそう呟いた瞬間、あちこちで談笑していた人たちが一斉にこちらを見た。



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