私と王子様のプロローグ
「神崎さん!お世話になっております」
夏らしく爽やかな色でまとめた蓮見先生とは対照的に、シックなスーツを着こなす神崎さん。
ネイビーの生地に赤のネクタイが映える。
「神崎さんはおひとりですか?」
「いえ、何人かいますがバラけて営業してます。水野さんは杉本さんと蓮見先生と一緒ですか」
「よくご存じで」
「お二人とも有名ですからね。蓮見先生は言わずもがなですが、杉本さんにお世話になっている人間は多い」
神崎さんの視線の先を追えば、杉本さんと蓮見先生の姿が見てとれた。
「ウェブCMの件、先日は脚本を提出していただいてありがとうございました」
「こちらこそ期限を延ばしていただいて、助かりました」
「さすがは蓮見先生だ。脚本の出来がよすぎて、逆に制作チームが頭を抱えています」
うまい言い方をする人だな。
本心なんだろうけど、神崎さんが言うと裏があるのではないかと探ってしまう。
「完成した作品を見せていただける日が楽しみです」
「あんなに素晴らしい作品を映像化するのは骨が折れます。本当にすごい人だ」