私と王子様のプロローグ
「そこまで手を回してくれてたのか。さすが水野さん」
けどね、と。私の髪にそうっと触れる。
「休憩が必要なのは俺じゃなくて水野さんだよ」
「私が?」
「ずっと気を張った状態だったから、疲れたんだろう。顔色があまりよくない」
「確かに少し緊張してましたけど、大丈夫です」
「俺の編集者っていう立場を抜きにしても、水野さんは経験を積んだ結果の立場がある」
私が無意識のうちに力を込め握っていた拳を、蓮見先生はほどいていく。
まずは右手。
「それを背負ってこの規模のパーティーに参加するんだ。気を張るのは当然だし、疲れるにきまってる」
何もかも、見透かされてる感じがした。
だって、その通りだ。新人の立場で参加するのと今回とじゃ全部が違う。
「はいできた」
蓮見先生によって開かれた自分の手のひらには、食い込んだ爪痕がうっすら残っていた。
いつのまに、こんなに自分の手を握っていたのか。