私と王子様のプロローグ
「さ、中に入ってください。話はそれからで」
「はい。失礼いたします」
蓮見先生に促され、部屋の中に足を踏み入れる。
私が今住んでる部屋以上に広いリビングには、シンプルだけどセンスのいいインテリアが配置されていて。
しかも、カーテンがない。ここまで高い場所あれば覗く人なんていないからだろう。
「適当にソファに座っててください。コーヒーは飲めます?紅茶がいい?」
「あ、私が淹れますよ」
「そんな気を遣わなくても。俺、美味しく淹れるの得意なんですよ」
「じゃあお言葉に甘えて。先生と同じものをお願いします」
大人しくソファに座れば、満足気に微笑んでキッチンへ向かう。
持ってきた資料やらPCをセッティングし終わり、手持ち無沙汰になって周りを見渡す。
棚にはぎっしり本が詰まっていて、背表紙のタイトルは英語からフランス語、中国語まで幅広い。
きっと小説を書くための参考資料なのかもしれない。
「お待たせしました。はい、どうぞ」
「わっ、いい香りですね」
「ミディアムローストのブルーマウンテン。口に合えばいいんだけど」
コーヒーを飲むだけでこんなに緊張したのはいつぶりだろうか。ゆっくりと口に含み、味わってみる。