私と王子様のプロローグ


杉本さんと部屋の前で別れて、蓮見先生のあとに続いて入る。


瞬間、ふわりと上品な香りが広がった。


ああ、これは蓮見先生の匂いだ。肩に入っていた無駄な力が抜けていく。


「とりあえず、楽な格好に着替えた方がいいな」


一旦リビングに荷物を置いた蓮見先生は寝室へ行くと、着替えをもって戻ってきた。


「はい。洗濯したばっかで着てないから大丈夫だよ」


「いえそんな、貸してもらえるだけでありがたいです」


ほのかに柔軟剤の香りがする、緩いシャツとスウェット。


「ドレッシングルームは右手にあるから行っておいで」


ドレッシングルームまであるのかと部屋の広さにまた驚かされつつも素直に借りることにする。


「はー、疲れた」


誰も見ていないのをいいことに深くため息を吐く。


アクセサリーを外し、丁寧にドレスを脱いでいく。


エメラルドグリーンを蓮見先生が用意してくれた紙袋に入れようとして、その袋に刻まれた有名ブランドのロゴは見なかったことにする。


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