私と王子様のプロローグ
特に蓮見先生はそうなってしまうはず。
「梓は仕事に没頭しすぎて食事を忘れるタイプっぽいよね」
「あはは、否定はできません」
ゆったりと流れる時間に、癒されていく。蓮見先生にも『顔色、よくなったね』と言われた。
「そうだ。ヘアセット崩す?」
「あー、そうですね。もう崩しちゃいます」
「俺がやってあげる」
「えっ、蓮見先生が?」
「だってその髪型複雑だし、後ろ側難しいでしょ」
それはそうだけど。蓮見先生にそんなことをやらせていいんだろうか。
反論するための理由を探してる数秒の間に、もうすでにやる気の先生が私の後ろへ。
「梓はゆっくりしてて」
「私、蓮見先生にお世話になりっぱなしですね。ただの編集者でしかないのにいいんでしょうか……」
「ただの編集者じゃなくて、俺の婚約者ってこと忘れずに」
先生の指が、編み込みを丁寧に崩していくのが感覚で分かる。