私と王子様のプロローグ
私は少し休憩して体調が回復したらもう帰るものだと思っていた。
「明日は土曜だし、時間も遅いし今から帰るの面倒でしょ」
「これ以上蓮見先生にご迷惑をおかけするわけには」
「迷惑じゃないし、恋人同士なら泊っていっても問題ない」
蓮見先生の理屈も分からないでもないけど。
あくまで編集者と小説家の関係であって。ぐるぐると考えている間に蓮見先生はバスタオルを私に持たせてくる。
「あの、蓮見先生」
「梓、もしかして俺と一緒に入りたいってこと?」
「ち、違います!一人で入ります!」
「そ。じゃあいってらっしゃい」
笑顔の蓮見先生に見送られる。勢いで一人で入ると言ってしまった。
ああ言えば私が言い返すと分かってたんだろう。全部計算のうちなんだ。
でも私がいつまでもぐずぐずしていたら蓮見先生のお風呂に入る時間が遅くなるし。
「失礼しまーす」
誰がいるわけでもないのに浴室のドアを開けるときに挨拶してしまう。
「ジェットバスに露天風呂つきって」
開いた口が塞がらない。