私と王子様のプロローグ
英語からフランス語、多様な言語の本とノートパソコン。それから第二弾のCM脚本用っぽい走り書き。
私のことはあれだけ甘やかしておいて、自分は帰ってきたら仕事。
「……甘すぎますよ、先生」
蓮見先生の優しさは、蜂蜜みたいに甘くて、いっそ全身浸かってしまいたいと思わせる。
「ダメなのに」
この、どうしようもなく甘美なそれを享受しつづけていたら。
今までは、しっかり仕事とプライベートは分けてきた。
社内ではもちろん、仕事の延長線上で知り合った人と付き合うとかもなくて。
そうして毎日毎日仕事をして、ここまで来たんだ。後輩もできて指導する立場にもなった。
それが崩れる気がする。いや、確実に何かが変わる。
蓮見先生からの告白は、それで先生の仕事がうまくいくならと。助けになるかもと思って頷いたのであって。
「……言い訳しか並べられないの」
いつからだろう。恋愛に憶病になったのは。二の次にするようになったのは。
自分で正論の理由を並べて、目を逸らす。