私と王子様のプロローグ


予約しておいた会議室をセッティングして、一旦デスクに戻る。


ちょうどいい時間で受け付けから連絡があり、エレベーターで降りた。


「お待ちしておりました。神崎さん」


「こちらこそ、お時間をいただきありがとうございます」


神崎さんがスッと口角を上げると、受付の子たちが頬を赤く染めた。


「会議室はこちらです」


神崎さんを案内しながらエレベーターに乗った。


「パーティー以来ですね、水野さん」


「その節はお世話になりました」


ビジネス上の、当たり障りない会話。ここで前みたいに本当の顔を見せる気はないらしい。


会議室までの廊下を歩くと、女性社員が神崎さんを見るたび振り返る。


「どうぞ、お座りください」


「・・・素っ気ないですね、さっきから」


ポーカーフェイスの裏で、何を考えているのか。



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