私と王子様のプロローグ
神崎さんは目を細め、探るような視線を向ける。
「もしかして、水野さんのおかげ、とか」
「私は何もしていませんし、関係ないですよ」
「そうですか?なんとなく今回の作品に出てくるヒロインは、水野さんを彷彿とさせる気がしますけど」
神崎さんに言われて、改めて考えると似てなくはない……と思う。
でも、もともと脚本を仕上げるために婚約者という立場になった。
それがちゃんと役に立っていると思えばしっくりくるというか、不思議じゃない。
「もしあのヒロインのモデルが水野さんだとしたら……続きが楽しみですね」
「本当に楽しみなら、楽しそうな表情をしていただけると助かります」
「はは、これは失礼いたしました」
同僚にも最近言われたばっかりなんです、と困ったように肩を竦めた。
うん、容易に想像できる。
逆に神崎さんが分かりやすく驚いたり笑ったりしているところを見てみたいかも。
こちらは想像するのが難しくて、途中で諦めた。