私と王子様のプロローグ


「水野さんは、どう思う?」


「私、ですか」


蓮見先生の作品は勿論すべて読んでいる。


ジャンルはサスペンスからファンタジー、群像劇まで幅広く、どの年齢層でも読める物語が多い。


「蓮見先生の作品は……愛を、探してるんだと感じました」


今まで読破してきた本の登場人物を思い出す。


「愛とはなにか、愛し方はこれでいいのか。そうやって、手探りで愛を求めてるんじゃないかって思ってました」


先生の書く小説を普通に読んでいるだけなら、恋愛要素を含む場面も綺麗で感動的なものだと感じる。


手紙を送ってくれた女の子のように違和感をおぼえることもないだろう。


「愛を探してる、か。そんなこと言われたの、初めてだよ」


蓮見先生は、色素の薄い綺麗な双眸を見開く。


「もっと具体的な言葉で表現できればいいのですが、それ以外に思いつかなくて」


「合ってるよ、それ。……正解」


大きな窓の外、ビル群の上に広がり始めたオレンジを見つめる。


「では、一緒に愛を探しましょう」


「水野さんと?」




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