私と王子様のプロローグ
そのコンセプトに沿って、蓮見先生独自のテイストを加えつつ仕上げていく。
「だから俺も。ちゃんと恋愛をしようって決めた。水野さんだからできると思ったんだ」
超一流の作家からの告白。もしこれが恋愛小説で自分が主人公であったなら、間違いなく受け入れただろう。でも。
「蓮見先生、私はあくまで先生の編集担当者ですので。その、恋愛……とかは」
「なんでもするんでしょ?」
「なんでもするっていうのは言葉のあやといいますか」
「俺、本気だよ」
それは十分伝わってくる。冗談でつき合おうって言ってるんじゃない、先生は本気だ。
でも今まで自分は仕事とプライベートは別。そういう考えで生きてきたから受け入れがたい。
立場をわきまえて、先生をサポートしていきたい。
けどここで断ったら、どうなるか。CMの依頼を断られる可能性が高まるし、無理やり脚本を書いてもらったとしてもその後うちとの出版契約はなくなることだってあり得る。
「ふっ、はは、水野さん面白いね」
蓮見先生はクシャっと笑いながら、私の隣に座った。あ、その笑い方、好きかも。
「水野さんが考えてること、だいたいは分かる」