カリスマ副社長はフィアンセを溺愛する

私のフィアンセ

私はバタバタと慌ただしい朝を迎えていた。

何故なら、


「どうしよ、ヤバい遅刻だよ。」

「寝坊してるからだろ。俺は先に行くから。」

「何で起こしてくれない訳？」

「心菜（ここな）が言ったんだ。」

「…………。」

「確か…………『社会人として自分の力で頑張りたい！』って。」

「起こしてくれてもいいでしょ？」

「今日から『俺とは話さない』って言っただろ。」


慈英を見た私は大きな溜め息を吐いた。その様子に嫌そうな顔を向けてくる。

慈英が昨日の話を引き摺っているのが理解できたからだ。

ちらりと見れば目と目が合う。

私を睨むように見ている慈英（じえい）は私よりも八つ年上の31才だ。

それも大企業の副社長なのに、目の前にいる男は不貞腐れた顔を私に向けていた。


「心菜、遅刻するなよ。」

「分かってる。」

「お先に。」

「いってらっしゃい。」


リビングを出て行く後ろ姿を見送った私は急いで自分の用意を始めた。


今日から私は新社会人になるのだ。