カリスマ副社長はフィアンセを溺愛する
「心菜は特別なんだ。あんなに猛アタックしてた俺を忘れた?」

「…………忘れてない。」

「こうやって俺の育った街に連れてきた意味が分かる?」


足を止めた慈英に釣られて、自然と私も足を止めた。

私服姿の慈英はこの街に溶け込んでいる。

観光客ではない。

生まれ育った街が似合っている。


「言っとくが、あの家に女は連れていった事はない。」

「そうなの?」

「当たり前だ。あの家は俺だけじゃない、家族の家だし、本気で結婚したいと思ったのも心菜が初めてだから。」

「…………。」

「俺の育った街を見せたかった。これから家族になっていく心菜に見せたかった。」

「家族になっていく?」

「違うのか?俺は家族になりたい、心菜と。」


家族になる…………。

結婚が現実味を帯びる。

慈英の覚悟が伝わる。


「俺の育った街や家、それに友達も会わせたい。これから家族になる心菜に見せたいと思ったんだ。」

「慈英。」

「俺の覚悟は決まってる。だから心菜の覚悟次第だから。」


慈英が再び歩き始めた。
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