カリスマ副社長はフィアンセを溺愛する
さっきより強く繋がれる手に、慈英の不安が伝わってくる。

私が慈英を不安にさせてる?


「慈英。」

「ん?」

「本当に私でいいの?」

「何度も聞くな。」


少し怒った感じの声に反省する。

何度聞いても私も不安だ。


「俺は絶対に裏切らない。」

「うん。」

「夏休みが終わったら…………結婚を進めていいか?」


即答したいが会社での立場が気になって仕方ない。

社員の間ではカリスマ的な存在だ。

そんな副社長との関係が公になる不安は拭い切れていない。


「進めていいか?」


もう一度同じ言葉を聞かれる。

握られた手に力が籠められ、慈英の不安が伝わってくる。

私も覚悟を決める時が来たみたいだ。


「いいよ。」


私も繋いだ手に力を籠めた。


「わかった。心菜、心配するな。」

「うん。」

「あー、優大の言葉を思い出す。『モテて嬉しいのは本命が現れるまで』か。」


上を見上げた慈英が目を細める。

照りつける太陽が眩しい。


「ちゃんと守ってやるから。」


慈英の言葉に私は頷いてみせた。
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