カリスマ副社長はフィアンセを溺愛する
副社長室にノックをして入る。


「副社長、コーヒーをお持ちしました。」

「ありがとう。」


ソファー席にコーヒーを置いて、部屋から出て行こうとすれば声を掛けられた。


「雨宮、大丈夫か?」

「はい、何も問題はありませんが。」

「そうか?」


椅子から立ち上がり、近付いてくる慈英を見上げた。

目の前に立つ慈英の手が私の額に触れる。


「心菜、熱があるんじゃないか?」

「えっ?嘘。」

「ほら、医務室に行ってこい。恵には連絡しておくから。」

「いや、大丈夫です。」

「ダメだ。」


慌ててデスクにある内線を掛ける姿を目で追い掛ける。


「恵、心菜が少し熱っぽい。医務室に行かせるから。」


直ぐに話がついた副社長が私を見る。


「行ってこい。」


仕方なく頷いた私は医務室に向かった。

廊下で額に触れてみるが、少し熱いくらいで大丈夫な気もする。

副社長の慌てぶりを思い浮かべれば、クスリと笑いが漏れてしまう。

あんなに慌てる程ではないのに。
< 115 / 216 >

この作品をシェア

pagetop