カリスマ副社長はフィアンセを溺愛する
秘書課に到着した私は恵さんに報告する。

手を止めない辺りは忙しいのが伝わってくる。

もう少し頼られたい。

そう感じてしまうのは否めない。


「定時ね。副社長に明日の会議の報告をお願い。」

「はい、行ってきます。」

「あっ、うん、お願い。」


恵さんが周りを確認し、埋め尽くされている席に頷いている。

誰も秘書課から出ていない。

つまりは私を追い掛ければバレる。


「行ってきます。」

「うん。」


副社長室へ向かう。

静かな廊下には誰も歩いていない。


「副社長、失礼します。」


一礼をして部屋に入ると、デスクで仕事をしている副社長がいた。

目が合う。


「明日の件で営業部長から…………。」


先程の話を伝えると、大きく頷いた副社長と視線が交わる。


「お疲れ様。帰りは?」

「えーっと。」

「待ってろ。」


内線を手に誰かに連絡している。

相手は賢らしい。


「賢、帰れるか?」

「…………。」

「なら秘書課へ来い。」


賢の声は聞こえないが、賢に頼んでいるようだ。

本当に申し訳ない。
< 133 / 216 >

この作品をシェア

pagetop