カリスマ副社長はフィアンセを溺愛する
「賢と帰れ。秘書課に迎えにくる。」

「副社長、本当に発表して良かったのかな?」

「何で?」


手を止めずに会話をする辺り、副社長も忙しいのが伝わってくる。


「周りに迷惑が。」

「一時的だ。騒がれるのも今だけだし、恵や賢が婚約した時には俺達が手を貸す。そうやってお互いにフォローするのは当たり前だ。」

「でも心苦しい。」

「嫁に来るって誓っただろ?」

「それはそうだけど。」

「嫁に来るって事は岬の人間になるって事だ。これから先は岬の人間で支え合って乗り越えていく。」


副社長が手を止めて視線を向ける。

突き刺すように冷静な視線が私に向けられている。


「心菜の覚悟って?」

「…………。」

「俺と何でも乗り越えていく覚悟はないのか?」

「あるよ。でも今は慈英だけじゃなく、恵さんや賢、武内さんにも迷惑を。」

「岬の人間には気を使うな。まあ優大は心に思う部分があるだろうから気にするな。」

「気を使うよ。」


声が段々と小さくなっていく。

心苦しいのは消せない。
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