カリスマ副社長はフィアンセを溺愛する
婚約者として回る?

それって…………。


「二人で?」

「恵には話である。ミサキの役員だけじゃなく、懇意にしている会社の人達にも紹介する。」


社内だけでなく、他会社の方々にも紹介…………。

今までは社内だけだったが、取引先の方々にも紹介されるって事になる。


「嫌か?」


慈英はズルい。

出逢った頃から慈英はズルい。

縋るような瞳を向けてくる。

俺とは嫌か?

私に嫌だと言わせない瞳で見てくる。


「いいよ。」


慈英の不安な瞳がいつでも私の心を動かしてしまう。

慈英を悲しませたくない衝動に駆られてしまうのだ。


「婚約者と紹介する。つまりは結婚を公言するって事だ。」

「うん。」

「心菜。良いのか?」

「うん。私には慈英しかいないよ。」


そう。

私には慈英しかいない。

こんなに愛を注いでくれる人は慈英しかいない。

慈英の不安そうな瞳が輝いていく。

私の一言で幸せそうな表情に変わっていく。


「心菜、ありがとう。」


お礼を言うのは私だ。

私に愛を教えてくれたのは慈英なんだから。
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