カリスマ副社長はフィアンセを溺愛する
運ばれてきた夕飯を食べながらも、二人の会話は途切れない。

いつも余裕ある彼が私だけに見せる不安げな表情や焦りのある行動を愛おしく思ってしまう。


「慈英は『落とせない女はいない』って思ってたでしょ?」

「『心菜を落とせるか』は不安だったけど。」

「そうなの?大人の余裕で満ち溢れてるように感じだけど?」


食べていた手を止めた慈英の視線が突き刺さり、顔を上げて見つめ返した。

大きな溜め息を漏らした慈英。


「余裕なんてない。あの頃の心菜は警戒心丸出しで俺と接してたのを知ってる。」

「あー、うん。だって自分がモテるのを分かってて、周りの人達と接してるのが伝わってきてたから。」

「まあ当たりだけど。ずっとモテてたのは否定しないし、それを知ってて相手の印象を良くしようとしてたのはある。」

「私にも?」

「当たり前でしょ。俺を好きになってくれるように心菜には接してた。」

「すっかり慈英に落ちてるけどね。」

「そうなるように俺も行動したし。」


また夕飯を食べ始めた慈英に、私も止めていた手を動かし始めた。
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