カリスマ副社長はフィアンセを溺愛する
気に掛けてくれる支配人に笑みを浮かべてみせるが、絶対に引き攣っていた。

それでも笑われる事なく、柔らかな笑顔で対応してくれた。


「初めての場所で緊張される方も多いですけど、岬様は緊張されてませんね。」

「緊張より嬉しさが勝ってるだけ。」

「!!!」


明らかに驚いた表情をする支配人と眉間に皺が寄る慈英をキョロキョロと見ていた。


「何?」

「あっ、いえ。会う度にお父様には聞かされていたご子息様とは…………随分と印象が違う気がしまして。」

「…………言わなくていい。」


ちらりと支配人と目が合う。


「最近では『家にも顔を見せない』と呟いていた意味も理解出来ました。」

「親父。」

「この歳になりますと、どうしても息子娘や孫の話になりますから。勘弁して下さいね。」

「…………。」

「それだけ子供の結婚は特別なんですよ、親にとっては。」


にっこりと笑みを浮かべる支配人を見つめる。

皺が刻まれる笑み。

髪には白髪が混ざっている。

歳を重ねてきた証拠が随所に見られる。


「いつでも親は子供の幸せを願っておりますから。」


その言葉が胸に突き刺さる。

私の親も……慈英の親も……幸せを願っているに違いない。


『幸せにならないといけない。』


隣の慈英と目が合う。

同じ事を思ったに違いない。
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