カリスマ副社長はフィアンセを溺愛する
最初はブルーを試着して慈英に見せた。

じっと見つめられて照れてしまう。


「慈英、どうかな?」


恐る恐る聞いてみた。

反応のない慈英に自信が落ちていく。


「慈英、似合ってない?」

「いや…………綺麗だ。」

「ドレスを着ただけだよ?ブルーはどう?」

「いい、似合ってる。」


なんかイマイチの反応だ。

違う色も着てみようと試着室の扉を閉めた。

ピンクも可愛い。


「慈英、ピンクはどう?」

「うん、いい。」

「慈英、オレンジは?」

「うん、いい。」

「赤は?」

「うん、いい。」


どれも同じ反応だ。

大きな溜め息を吐き出せば、慈英が我に返ったようだ。


「どれも似合ってる。」

「どれが似合ってた?」

「うーん、どれも似合ってる。」


どれも?

私に似合う色を聞いてるのに『どれも』?

慈英に聞いたのは失敗みたいだ。

とりあえずは保留って感じだ。

ドレスは慈英と選んでも決まらないと確信した。


「恵さんにお願いしようかな。」

「はあ?」


途端に不機嫌になる慈英をシャットアウトするように試着室の扉を閉めた。
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