カリスマ副社長はフィアンセを溺愛する
『延ばさない?』

『大丈夫だから。』


結婚式場で聞いた言葉が蘇る。

全然忙しくて大丈夫じゃない。


「ふぅー。よし、戻ろうかな。」


大きく深呼吸を吐き出して秘書課へ戻った。

最近の慈英は忙しいから、自然と一人だけで過ごす日も多い。

学生時代は気にならなかった生活だったが、社会人となって初めて過ごす、忙しい慈英との生活を寂しく思ってしまう。

ウエディングドレスか。

慈英ではなく、恵さん達と選ぶドレス。

慈英は『私の好きなドレスでいい』と言ってくれる。

でも『これがいい』とか『こっちの色が似合う』とかって言って欲しいのもある。


「慈英は『何でもいい』って思ってるのかな。」


そんな呟きが漏れてしまうぐらい、私の心は不貞腐れてしまっている。

私だけが結婚式を楽しみにしてるみたいに思える。

慈英にとって…………結婚式って何だろう?

二人の結婚式に対する意気込みに、温度差が生じ始めているように思えた。


『私だけが楽しみにしてるの?』

『慈英は?』


そんな事ばかりが頭を過っていた。
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