カリスマ副社長はフィアンセを溺愛する
視線から逃れたくて、チューハイを一気に流し込んだ。


「心菜、どうしたの?幸せ盛りでしょ。」

「副社長と結婚だよ?羨まし過ぎでしょ。」


鈴乃も結衣も分かってない。

会社ではカリスマ副社長だろうけど、私が好きなのは私だけを愛してくれる一途な慈英だ。

仕事のように結婚式を片付けようとしてる副社長じゃない。


「私が結婚するのは副社長なの?」

「心菜?」


いつの間にか涙が頬を伝い落ちていた。

俯く私の声が小さく呟かれる。


「結婚式は仕事の一部なの?」

「…………。」

「確かに副社長なんだし、立場があるのは理解してるつもりだよ。でも…………。」

「…………。」

「秘書に指示するみたいに、『祝辞は決めた』、『余興も決まってる』、『心菜は恵と』…………二人で作り上げていくんじゃないの?」

「…………。」

「結婚式って…………二人で相談して決めていくモノじゃないの?」


ポタポタと伝い落ちていく涙を手で拭った。

ずっと吐き出したかった。

ずっと心に押し込めていた想いを吐き出したかった。


「心菜、岬慈英に嫁ぐって事はミサキ商事を含めた岬家に嫁ぐって事だろ。」

「賢?」


掛けられた言葉に、顔を上げて賢を見た。
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